無料小論文・志望理由書講座――第3回:構想メモを作成し答案を完成させよう

初めて小論文・志望理由書に取り組む方を対象とした無料講座です。

小論文の書き方・考え方を実際の出題例に即して、基本から解説しています。
推薦・総合型選抜では必須の志望理由書についても解説しています。

   目次
序論:入試小論文の傾向と対策
第1回:文章表現の基本
第2回:設問の要求を吟味し、課題文を要約しよう
第3回:構想メモを作成し答案を完成させよう〈今ココ
第4回:志望理由書の考え方・書き方

1.構想メモの作成 

 私が下線をした概念は,次の通りです。

「和」を尊び・争いを避ける・日本文化モデルを理解するため・欧米文化モデル・争いの文化を知る必要・相互理解を深めるために不可欠・争いを表面化する利点・「本来の自己」と「集団の和を尊ぶ自己」との葛藤や相克・自己が解放・集団レベル・諸問題が白日の下に置かれ意識化・本当の和への模索・争点が表面化し,取り上げられることは,それ自体意味がある・決着される・新しい段階へと進むことができる。

1)「著者の主張」を文章にまとめよう
 これらの重要概念を関係付けることで,答案に盛り込むべき課題文①著者の主張ができあがります
。このとき,答案全体が※800字以内ですから,②あなたの考えと③自分の体験も答案に盛り込むためには。せいぜい200字程度にするべきでしょう。この字数で,課題文の主張をまとめると,次のようになります。

 「和」を尊び,争いを避ける日本文化を理解するには,欧米の争いの文化を知ることが必要であり,さらに(1)相互理解を深めるために不可欠だという。さらに争いを表面化する利点として,「本来の自己」と「集団の和を尊ぶ自己」との葛藤や相克が明らかになり,(2)自己が解放される。また集団レベルでは,争点が表面化することで,それが(3)決着され,新しい段階に進むことができる。(176字)

2)「著者の主張」に対応する「自分の体験」を用意しよう。
 ここで,①著者の主張が一つではないことに気付くでしょう。少なくとも,(1)異文化を理解することの意義,(2)「争い」の個人(自己)にとっての意義,(3)「争い」の集団にとっての意義,という3つの主張が読み取れます。
 この3つに対して,②あなたの考えを均等に述べる必要はありません。どれが重要と考えたか説明をした上で,どれか1点に絞って議論しても良いでしょう。もちろん,2つ,あるいは3つ全部取り上げても構いません。どれを取り上げるかは,議論の材料となる③自分の体験が何かによるといえます。解答者個々人がどのような体験をしたかによって,答案全体の構成が大きく変わってきます。
 外国出身の転校生が自分と違う考え方なのに驚いたこと,部活の方針で異なる考えの友人と論争になったこと……,といった①著者の主張に関係付けられる体験を探しましょう。

3)自分の見解=「あなたの考え」をまとめよう。
 つぎに,体験から①著者の主張に対してどういう立場に立つかを考えます。③自分の体験から,①著者の主張に賛成できるのか,あるいは反対なのかを考えることになります。
 なお,賛成・反対ということについて,補足しておきます。受験生の多くが誤解しているのですが,課題文に対して解答者の取りうる立場は,全面的に賛成・全面的に反対,という二つに限定されません。もっと多様な立場に立ちうるのです。
 例えば,多くの場合に課題文の考えが妥当するが,例外があり,その例外に対しては別の対応が必要だ,といった立場もありえるでしょう。また,課題文の考えはある特殊な場合にしか当てはまらないので,原則として別の対策をとるべきだ,といったこともあるでしょう。いわば6:4で賛成,7:3で反対,といった議論でもよいのです。

 以上の1)~3)の作業をしますと,答案に盛り込むべき3つの要素,①著者の主張・②あなたの考え・③自分の体験が全て揃ったことになります。これを元に全体の構成を考えましょう。具体的には,何をどのような順番で書くかの構想メモを作成しましょう。事項の最初に、私なりの構成メモを紹介します。

2.構想メモから答案を作成しよう。

 ここでも,構成メモの例を示しましょう。

第1段落:著者の主張=要約(200字程度)
第2段落:あなた=私の考え
 異文化ではなくても他者の立場を理解した上で,論争することは有益。しかし,参加者の相互尊重と,まとめ役の役割が重要(150字程度)
第3段落:体験
 文化祭のクラス参加(150字程度),特に消極的な人への理解と対策
第4段落:体験に対する分析・考察
 議論をまとめることの難しさと大切さ

 以上をまとめると,次のような解答例になります。

 A課題文著者は,「和」を尊び,争いを避ける日本文化を理解するには,欧米の争いの文化を知ることが必要であり,さらに相互理解を深めるために不可欠だという。さらに争いを表面化する利点として,「本来の自己」と「集団の和を尊ぶ自己」との葛藤や相克が明らかになり,自己が解放される。また集団レベルでは,争点が表面化することで,それが決着され,新しい段階に進むことができるA,と述べている。
 A私は,文化理解といった大きな問題ではなくても,相手の考え方を知ることは大切だと考える。そして,差異を知るためにも争いの一種である論争は有益だと考える。しかし,有益な論争が行われるためには,参加者が相互に敬意を払うことと,議論の進め方が重要である。このように考えるのは,高校3年のとき,私のクラスが文化祭に参加したときの体験があるからだ。私は数人の友人達と高校時代最後の思い出になるよう,文化祭にクラスで参加したいと考え,提案した。しかし,文化系の部活は文化祭が,また運動部でも秋大会が高校時代の集大成になるという人や,入試対策を優先したいという人が多く,クラスでの参加は否定されそうであった。
 そこで,私たちは彼らの考え方を尊重して,材料の買い出しなど簡単なことだけ参加してもらうような企画を提案した。また,彼らも私たちのクラスでの思い出を作りたいという希望を尊重して,少しだけでも参加してくれることとなった。そのため,部活や受験に悪影響はなく,しかもクラス全体としての達成感も得られた。このとき,相互に異なる立場を頭ごなしに否定するのではなく,それぞれを尊重して良く聴いて理解しようとしたことが,鍵となった。また,ホームルームで議長を務めてくれた友人が,その都度論点を整理し,議論がかみ合うように議事進行をしてくれたことも大きい。C争いが有効となるには,こうした条件が満たされていることが必要である。(785字)

:小論文に限らず,およそ論文においては,資料その他「他者の見解」と,「論文筆者の見解」が明確に区別されていなければなりません。この区別を明確にするようにしましょう。そうでなければ,単に「課題文が読めていない」という減点だけではなく,最悪の場合,盗作・剽窃と判断されかねません。
③自分の体験を先に述べ,そこら②あなたの考えを導き出す,という順番で構成しても構いません。ただ,先に結論にあたる②あなたの考えを示す方が,途中で議論が脱線する可能性が低くなります。論文を書き慣れない方には,先に結論を述べる構成をお勧めします。
:この部分はいわゆるまとめです。まとめでは,①それまでに取り上げた最重要概念(論点)とその相互関係(論旨)を繰り返す(論旨の確認・強調),②論証をせずに今後の展望,他分野への影響を示す,といった記述をします。現在は,この①に当たる記述です。なお,制限字数がきびしければ,まとめは不要です。①であれば他の箇所と重複しますし,②であれば論文としての論証を欠く部分となります。いずれにせよ,字数に余裕がない時には全面的に割愛しても,全体の論旨に影響しない箇所なのです。もちろん、これが唯一の正解ではありませんが、参考にしてください。

付録.さまざまな出題形式への対応

 ここまで,設問文とはべつに課題文が与えられている形式の出題について,答案作成までの手続きを見てきました。しかし,これとは異なる形式の小論文出題も少なくありません。以下では,そのなかで出題例が多いものについて,注意点を挙げることにします。

1)設問文だけからなる出題
 議論すべき論点を指示するだけの出題で,小論文入試が導入された当初は多く見られました。現在でも出題例は少なくありません。「現在,関心を持っていることについて書け。」といった論点の限定が緩やかで,解答者の自由度が高いものから,「芸術と伝統についての あなたの考えを,ひとりの芸術家,あるいはひとつの芸術作品,芸術プロジェクト等にふれながら,800字以内(句読点等をむ)で述ベよ。」と議論の内容を細かく指示しているものまで,かなり幅があります。
 いずれにしても,設問文の重要概念(論点)に注目して,何を議論するかを考えます。具体的な内容は,ご自分の知識から用意することになります。学校で学んだこと,体験したこと,見聞きしたことなど,何でも良いでしょう。なお,「ひとりの芸術家,あるいはひとつの芸術作品,芸術プロジェクト等にふれながら,」といった形で議論の進め方まで指示している出題もあります。このような場合には,その指示に忠実に従ってください。

2)図表やグラフを用いた出題
 理系学部や文系でも経済学部などでは,課題文ではなく図表が資料として提示される出題があります。図表から読み取ったことを文章化することが苦手な受験生には厳しい出題形式です。このような出題でも設問の要求を正しく把握することが最優先です。そして,設問の要求に沿って注目すべきデータを見つけていきます。なお,読み取った内容を文章化する際には,図表で使われている概念はできるだけ正確に使いましょう。例えば,グラフでは「15~20歳」としているのを,「若者」と言い換えてしまうと,例えば21歳の人を含む・含まないの差が生じます。

3)英文課題文を読む出題
 最近増えている出題形式です。基本的には教科としての英語入試問題と同じく,単語や文法の知識が必要になります。ただ,教科の英語とは違い,細部まで正確に訳せる必要はなく,全体としての論旨が理解できれば十分です。したがって,英語力そのものはそれほど高度なものは要求されないのですが,内容が出題学部・学科の専門に関するものですから,英語の論文を読み慣れていないと,戸惑うかもしれません。特に次の4)と関係しますが,自然科学の英文論文は,よく知っている用語でも英語になると全く分からない,ということがおきがちです。
 この対策としては,志望先の過去問を何年分か見ておくと,どのような分野から出題されるか見当がつきます。同時に,その分野で使われる独特の語句なども知ることができます。

4)理系の出題
 理系の学部・学科では,文系以上に専門知識がないと入学後授業について行けなくなる度合いが深刻です。そのため,小論文入試でありながら,理系教科の専門知識を問う出題がしばしば見られます。数式や化学式を解答するなど,教科としての理科や数学の文章題と言うべきものもあります。その一方で,医学系や看護・保健系の学部などでは,生命観・倫理観を問うような,小論文らしい小論文を課す大学もあります。
 いずれにしても,過去問を予め見て,どのような出題なのか把握しておくことが大切です。

 

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