■初めて小論文・志望理由書に取り組む方を対象とした無料講座です。
小論文の書き方・考え方を実際の出題例に即して、基本から解説しています。
推薦・総合型選抜では必須の志望理由書についても解説しています。
目次
序論:入試小論文の傾向と対策〈今ココ〉
第1回:文章表現の基本
第2回:設問の要求を吟味し、課題文を要約しよう
第3回:構想メモを作成し答案を完成させよう
第4回:志望理由書の考え方・書き方
1.小論文とは何か
多くの参考書が,冒頭で小論文の定義をしていますので,またかと思われたかもしれません。しかし,「論じなさい」「考えを述べなさい」といった設問に対して,論文以外のものを提出してもほとんど評価されません。このような出題に対しては,論文の定義に沿って次の三要素をしっかり押さえるようにしましょう。
①一定の論題(テーマ)に沿っていること
②解答者の考え(主張・見解)が明示されていること
③事例など論拠(理由)を示していること。
入試小論文では,①は出題者が指定します。設問が要求している論題に対応していない答案は,評価の対象外です。②は,誤解している受験生が少なくありません。①に関する他者の議論を紹介しているだけで解答者自身の考えがない,という答案が多いのです。さらに②の見解を述べても,③に当たるその論拠(理由)を示していない答案もしばしば見受けられます。これでは解答者の意見表明・感想発表にすぎず,読者(入試では採点者)から合理的・理性的な同意・納得を得るという論文の目的を達成できません。
*ただし,近年「小論文試験」と謳っていながら,①②③を満たさなくても良い設問が増えています(後述)。
2.評価される能力
小論文入試では,主として以下の三点を評価します。
1)作文能力
これは,小学校以来おなじみの文章を作成する能力です。若者は自分の考えを文章で表現することが苦手だ,といわれています。身近な仲間内で使っていることばをそのまま答案で書いてしまう人や,主語述語の対応など基本的な構文が怪しい人もいます。この作文能力は「論文の3条件」には入りませんが,人に何かを伝える文章を書くための基礎です。大学側はこの能力に問題のない学生を求めています。新学習指導要領の重視する「思考力・判断力・表現力」の「表現力」がこれに当たります。
2)文章読解力
小論文入試では,課題文(資料)を読ませる形式が一般的です。これに対しては,論理的な文章の内容を読み取る能力が必要です。一般教科の入試,特に現代国語や英文解釈でも要求されるものですが,小論文入試ではより高度な読解力が要求されます。たとえ課題文の見解や主張が常識とは異なるものでも,解答者は論理的な手続きによって理解しなければなりません。「思考力・判断力・表現力」の「判断力」が密接に関係するでしょう。
なお,グラフなど図表を示して,その読み取りを求める出題も増えています。苦手とする高校生が多いので,志望校が図表を課す場合には,問題演習を通じて馴れておくと良いでしょう。
3)論理的思考力
これは,論題を論理的・批判的に考える能力,そしてそれを文章に表現する能力です。1)2)4)は一般教科の入試でも問われますが,この3)は小論文入試固有のものといえます。新指導要領で,「思考力」とされているものに該当します。
この側面で高校生が躓きやすいのは,主張・見解と,その論拠との対応です。これが正確に把握できないために,課題文の読解や,自分の見解の論証に失敗してしまいます。
4)大学進学後必要になる基礎的な知識
小論文入試は,かつては特定の教科に関する知識を問わないといわれていました。そのため,特定の教科を履修したかどうかで理解に差が出るようなものは避けるのが原則でした。しかし,ゆとり教育批判や,学力低下の報道がマスコミを賑わせた時期がありましたが,この頃から出題大学・学部の専門に直接関係する出題が多くなります。
特に理系の学部学科では,高等学校理科あるいは数学科の知識を前提にする出題が見られます。医学部の出題では,生物や化学の知識を前提にするものが増えています。その他の学部でも,環境破壊の事例を紹介している文章を読ませた上で,そこで起きている有害な化学物質の生成過程や,生物相の変化を考えさせる,といった出題が見られます。文系の学部学科でも同様の傾向が見られます。社会科学系であれば,高等学校公民科で学習する政治原理・経済原理を前提にしないと理解できない課題文を読ませる等の出題です。
なお,文系理系を問わず,英語の課題文を読ませる出題も増加しています。高校の英語では,学術論文,特に理系の論文を読む機会が少ないため,ごく簡単な化学物質名や初歩的な数学的操作が,英語になっただけで全く理解できないという受験生もいます。
5)論文を書かせない「小論文入試」
4)の傾向がさらに深まり,高校教科の基礎知識と理解力だけを問う出題も登場しています。こうした出題では100字以上の答案を書かせる設問があっても,課題文の内容把握=要約を求めるだけの出題です。こうした出題で,解答者独自の見解を書きますと,致命的な減点になりますので,注意が必要です。
3.小論文対策は何から始めるかー基本は過去問演習
この部分は特に、小論文の指導に当たられる先生方に、ぜひお読みいただきたい単元です。
小論文の出題形式が多様化する中で,対策の第一歩となりますのは,実際に最近の出題例を入手することです。基本的なことなのですが,この努力をしていない生徒さんが多いようです。また小論文を課す受験型は,推薦入試や国公立大の後期試験など受験者数が少ない場合が多く,市販の問題集に収録されていないことがあります。さらに,課題文の原著作者との関係から,非公開としている大学・学部があります。それでも,大学の入試課などに問い合わせれば,受験生本人や教育機関に対しては,教育を目的とする利用として頒布してくれる所もあります。また頒布はしていなくても,直接大学の窓口に出向けば,閲覧させてくれるという対応はかなり多く見られます。
もちろん,こうした作業を先生方が自らなさる必要はありません。志望校へのモチベーションを高めるためにも,出来るだけ生徒さん自身にさせるとよいでしょう。
なお,それでも全く非公開という大学・学部も存在します。この時,他の受験生も条件は同じなのだから特に何の対策もしないという方法もあります。ただ,募集要項などに「英文の読解力を問う」「基礎的な生物学の知識を見る」といった学力試験の条件が書かれているはずです。こうした記述があれば,英語の課題文が出題される,高校生物の知識が必要になる,といった程度は推定できます。また受験してきた生徒に出題の内容を確認しておくことも,翌年以降の資料になります。
指導にあたられる先生方が受験生だった頃と比べ,大学入試小論文は大きく変わっています。特に出題大学・学部による差が大きいので,過去問の取得,また大学側の出題方針を丁寧に分析し,適切な対策を立てる必要があるのです。
より実践的な入試小論文対策には、「入門小論文講座」(有料)のご利用をお勧めします。
志望理由書の書き方については、「志望理由書対策講座」(有料)をご利用ください。
また、入門小論文と志望理由書をセットにした「推薦・総合(AO)型選抜入試対策講座」(有料)も開設しています。
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