■初めて小論文・志望理由書に取り組む方を対象とした無料講座です。
小論文の書き方・考え方を実際の出題例に即して、基本から解説しています。
推薦・総合型選抜では必須の志望理由書についても解説しています。
目次
序論:入試小論文の傾向と対策
第1回:文章表現の基本
第2回:設問の要求を吟味し、課題文を要約しよう〈今ココ〉
第3回:構想メモを作成し答案を完成させよう
第4回:志望理由書の考え方・書き方
ここからは,実際の出題(上智大学2021年度総合人間学部看護学科)の出題に即して,小論文入試の考え方,答案の書き方を学んでいきましょう。
なお,ここで取り上げるのは,課題文が示され,その内容を踏まえて解答者独自の見解を述べるものです。小論文入試の出題形式として,もっとも一般的なものですが,課題文がなく設問文だけのもの,課題文ではなく図表が与えられるものなど,他の出題形式も少なくありません。そのような出題に対する対策にも適宜触れていきます。
では,早速出題を見ていきましょう。 【問】 下記の文章を読み,著者の主張に対するあなたの考えを,自分の体験を踏まえて800字以内で述べなさい。(時間:60分)
「和」を尊び,争いを避ける技術を発展させてきた日本文化モデルを理解するためには,欧米文化モデルが培ってきた争いの文化を知る必要がある。それは,日本文化人が欧米文化人と共存し相互理解を深めるために不可欠なことであろう。争いには肯定的,積極的な側面があること,争うことには長所があることをまず認識しなければならない。それはまた自己の文化の長所を控えめにほのめかし,察してくれるのを待つのではなく,積極的に表現し理解させることを学ぶことでもある。
争うことは,第一に隠された争いを表面化する利点がある。まず個人レベルでは,しばしば和を乱すことを恐れて,自分本来の欲求を抑えることがある。しかし,自分の内部で公にすることをためらっていた争いを持ち出すことによって,「本来の自己」と「集団の和を尊ぶ自己」との葛藤や相克が認識され,理解され,討議され,解消させる可能性がある。すなわち,その葛藤が葛藤として表現された場合には,他者がその葛藤の存在について少なくとも認識し,場合によっては理解し,さらには解決を図ることまで進むかもしれない。自己の欲求が葛藤よりもはるかに強く,それのみが全面的に表現された場合には,複雑で屈折した自己が解放され,単純で素直な自分に戻ることができる。
また集団レベルでは,その集団が抱えていた諸問題が白日の下に置かれ意識化される。見せかけの和から,本当の和への模索が始まる。争点が明らかになり,対立の構図も明確になる。このことは争点および争点にかかわる当事者の二つに関係する。表面化される以前,争点は,相手のグループにその存在さえ意識されなかったり,その重要性が無視,無害化,あるいはタブー化されたりしている。この争点が表面化し,取り上げられることは,それ自体意味がある。取り上げられたという事実は,それがどのように可決されたか,ということに劣らぬ重要性を持つ。(中略)表面化された争点は,早かれ遅かれ,決着されることになる。例えその決着が不満足なものでも,次の新しい段階へと進むことができる。
【梅本尚人,『「争いの文化」と「和の文化」,フェリス女学院大学編,多文化・共生社会のコミュニケーション論』,翰林書房,2008,pp.128-140より一部改変】
課題文の長さは大学入試小論文としては短めですが,60分以内に答案を完成させるのは,結構難しいといえるでしょう。正しい手順で,しかも要領よく考えていく必要があります。
1.設問文の重要概念をチェックしよう。
入試小論文はあくまでも設問に対する解答です。したがって,設問の要求(=書けと指示されていること)を正しく把握することが大前提となります。まずは,設問文を分析することから始めましょう。具体的には,設問分で使用されている重要概念(論点)を把握することです。
ここは皆さんに作業をしていただきましょう。課題文の重要概念に下線をしてください。
2.設問の要求に沿って,課題文を読もう。
前回お願いした作業結果はどうでしたでしょう。私なら,答案に書けと指示されている概念は,下線をした①②③だと思います。
下記の文章を読み,①著者の主張に対する②あなたの考えを,③自分の体験を踏まえて※800字以内で述べなさい。
完全にこの通りでなくても構いませんが,この3つに気づくことで,解答の基本的な枠組みがきまります。以上の条件を考えますと,答案は次の要素を含んでいなければなりません。
①著者の主張:課題文著者の主張を正しくまとめている。
②あなたの考え:①に対する賛否など,解答者独自の見解を述べている。
③自分の体験:課題文著者の主張を正しくまとめている。
この整理ができますと,次の作業が明らかになりますね。答案に必要な要素を揃えるためには,まず①を解決しなければなりません。それには,課題文「著者の主張」にとって重要な概念(論点)を抜き出して,その相互関係(論旨)を明らかにすることです。早速重要概念に下線をして,それを抜き出してみましょう。
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