無料小論文・志望理由書講座――第1回:文章表現の基本

初めて小論文・志望理由書に取り組む方を対象とした無料講座です。

小論文の書き方・考え方を実際の出題例に即して、基本から解説しています。推薦・総合型選抜では必須の志望理由書についても解説しています。 

    目次
序論:入試小論文の傾向と対策
第1回:文章表現の基本〈今ココ〉
第2回:設問の要求を吟味し、課題文を要約しよう
第3回:構想メモを作成し答案を完成させよう
第4回:志望理由書の考え方・書き方

1.原稿用紙の使い方


 入試小論文の解答用紙は,多くの場合マス目の原稿用紙です。この使い方が正しくありませんと,大きな減点に繋がります。入試小論文で問われる能力の1)作文能力を評価する際の基準にもなります。

1)文字とマス目の関係
①原則は1マスに1文字
 これは縦書きでも横書きでも変わりありません。また,句読点(,。)や中黒(・のことです。ナカグロと呼びます)などの区切りに使う点,かっこ(「」『』()など),数学記号(+-%なども含む),その他とにかく文字として原稿用紙に記入するものは,次にあげる例外以外,すべて1マスに1文字ずつ書いてください。

②1マスに2文字書く文字
 これは,原則として横書きの場合にしかありません。これは具体的には英語(あるいはほかのヨーロッパの言語)の文字を書く場合です。アラビア数字(123……)やアルファベット(AaBbCc……)です。kg・cmなどの単位もこの原則で1マスに2文字書いて下さい。例えばrunと書く場合には,ru/nのように区切っていきます。最後のnのマスは半文字分だけ空くことになりますが,次の文字を半分だけ入れるようなことはしないで,次のマスから書き続けて下さい。
 なお,縦書きの時には,アラビア数字は漢数字(一二三……),単位はカタカナ(キログラム・センチメートル……)で書くべきです。英語の単語についてもr/u/nと区切るか,はっきり「ラン」とカタカナにしてしまいましょう。

③行が変わる時の例外
 以上のように横書きの欧文の場合を除けば,必ず1文字は1マスなのですが(縦書きの時には例外なく1字1マス),位置によって「そこに書いてはいけない」というものがあります。それは「行が変ったとき,その一番上に書いてはいけない文字(というよりは記号)がある」ということで,具体的には句読点(,。)ととじるカッコ(」』など。「『などはかまいません)を行のはじめのマスに入れてはいけない,ということです。ではどこに書くかと言えば,前の行の終わりの文字マスに書いてしまいましょう。この場合,前の行の最後のマスには,2文字(」。などの時には3文字)入ることになります。
 なお,この句読点やとじカッコを前の行の最後のマスに入れるのではなく,最後のマスの外にはみ出して書く方法もありますが,あまりお勧めしません。それでいけない,という理由はないのですが,最近の書物などは,ワープロソフトが普及したせいか,句読点やとじカッコを行の外にはみ出させず,行の最後のマスの中に入れてしまう例が多くなってきているからです。
 最後に,・(ナカグロ=中黒)について,これは行のはじめに書いてよいのか,句読点などと同じ処理をするのか問題です。これを使うことは少ないのですが,英語では2つ以上の単語になるものを,くっつけてできた言葉を一語として使うとき,英語の単語の区切りのところに使ったりします(マス・コミュニケーション,ヘレン・ケラーなど)。私は,行のはじめにきてもよい,という立場です。もともとマス目の真中に書く記号なので,ほかの文字と同じマス目に書いてしまうと,みっともないからです。




 

 

 

 

 

 

*少し専門的なお話をしますと,句読点や「」などは,漢文に対する訓点に起源があります。漢文を履修した人は知っていると思いますが,訓点は本文の右下脇に記入します。したがって句読点や閉じ括弧(」)の入る位置=文章の切れ目が行末に来たとき,そのことを示す記号はそのまま右下脇に書くことになります。これを次の行の冒頭に置いたのでは,文の切れ目が分かりにくくなります。逆に意味のまとまりが始まる位置を示す「が前行の末尾にあるのも,始まりを示すという機能から考えると不適切です。これを避けるために,次の文字といっしょに一マスに収めるのです。
 なおこの右下脇という原則のない=漢文起源ではない・や()“”等の扱いは判断に迷います。()“”は「」と同じ扱いにすることになっていますが,・の扱いは混乱があるのです。・に関しては,句読点ではなく,完全に一つの文字として扱う方が多数派です。

2)段落の区切り方と表題の付け方
①段落を設ける位置
 みなさんが何か本や雑誌を読んだとき,段落が変わらずに何十行もびっしり文字が詰まっている文章は,「読みにくいなぁ」と感じたことでしょう。これは単に,文字ばかりで見にくいといった視覚的な理由だけではありません。どこからどこまでがひとまとまりの話なのかわからない→全体の流れがつかめない→意味がとりにくい→内容がわかりにくい,となってしまうことが原因なのです。
  逆にいえば,上手に段落が切ってある文章は,話の流れやまとまりがうまくできていて,内容的にもすぐれた文章であるといえます。段落をどこで切るかは,高得点を取るために大切なことなのです。
 では,段落はどこで切るとよいのでしょう?よく,5,60字~100字ぐらいで1つの段落にせよ,などと説明している参考書がありますが,むしろ,内容で切ることを考えてください。これは,うまく内容のバランスがとれていれば,適当な長さの段落になるからです。小論文の全体構成を後ほど説明しますが,そのブロックごとに1段落とするとよいでしょう。

②段落の冒頭は1字空ける。
 ここで覚えていただきたいのはただ一つ,段落を切るときには,段落の最初の行の最初の1マスをあけることです。なお,解答が文ではなく,語句になる場合には,1字空けの必要はありません。
 なお,近年ではスマホやメールの普及で,限られた画面で,しかも受信側の機種や設定によって,段落位置がずれてしまうことが多くなっていますので,1字空けをせず改行だけにする表記法が増えています。そのため,特に解答が一段落に収まる場合には,冒頭の1字空けをしなくてよい,という指導をする参考書や予備校があるようです。しかし,私の大学教員をしている友人達の話からは,1字空けをしていなくて減点になることはあっても,1字空けをして減点になることはないそうです。安全策のためにも,1字空けの原則を守ってください。

③表題(タイトル)の付け方
 文章に表題をつけなさい,という指示がされている場合があります。表題を書く場所や書き方が指定されているなら,当然従って下さい。そうした指定がない場合には,次の原則に沿ってください。
(1)解答用紙の最初の行に
(2)3字分空きをとり(4つ目のマスから書く)
(3)本論との間に1行何も書かない行を置く(本論を3行目から書く)
という原則で書いてください。

※以上の原則は,マス目がなく罫線だけ,あるいは解答スペースだけが枠で指定されている場合でも同じです。

2.文の構成


1)主語述語の関係を意識する。
 親しい友人同士の会話やメールであれば,状況認識が共有されていますので,誰(何)が,誰(何)を,どうした,といった構造が曖昧な文章でも,コミュケーション可能です。しかし,受験生と採点者との関係は,共有されている情報が少ないですから,概念(論点)の関係(論旨)を誤解されないためにも,主語述語の関係が曖昧にならないようしてください。
 このことは,特に重文・複文の場合,重要になります。特に欧米の言語と違って,関係代名詞が存在しない日本語では,語句の意味を限定しようとすると,1文に複数の主語・述語関係が含まれる重文・複文が多くなります。論文を書き慣れない人が重文・複文を多用しますと,論旨が追いにくくなります。さらには論旨のねじれ・混乱ともなります。いくつかの文を適宜切り分けることで,こうした混乱を避けましょう。

2)前後の関係=論旨を明確にする。
 一文一文の内容が明瞭でも,文相互の関係が曖昧であったり,矛盾したりしたのでは,論旨が一貫しません。そこで,文と文をつなぐ接続の言葉が重要になります。「しかし」「だが」といった逆接の接続詞や,「また」「一方」など論点の変更を示す接続詞……などを前後の関係を適切に示す接続詞を入れることで,前後の関係が誤解なく伝わるようになります。
 なお,接続の言葉は,文法上の接続詞だけではありません。重要概念(論点)も前後の関係を示めす接続の言葉になります。例えば,次のような文章の場合,「提案」という語が前文と後文との関係を明示していますね。

  課題文では,………を提案している。私はこの提案に対して……と考える。

 このように重要概念を共有させることで,同じ問題をめぐる議論が続いていることが明確になります。

3.文字と言葉遣い

1)きれいでなくとも読みやすい文字で
 制限時間があるのでどうしても焦りますから,早く書こうとして,崩した字になってしまいがちです。そうしますと,採点者も読みにくいので,せっかくの内容も十分に理解してもらえなくなる可能性が出てきます。また,特に漢字などは,崩した字で書くと,誤字と判定されるかもしれません。漢字の書き取り試験ほどではなくとも,ゆっくり目に書きましょう。だいたい標準的な原稿用紙(20字×20行で400字)1枚を20分ぐらいで書くのが目安です。

2)くだけた言葉はひかえよう
 言葉は生き物ですから,時代とともに意味も変ってきますし,何がくだけた言葉や表現なのかという印象も変化します。ただ,採点者は,当然,高校生よりはかなり年齢が上です。したがって,たいていの場合,受験生の普通に使う言葉使いより1・2世代前の言葉の感覚でしょう。そういった人たちに,「タメ口」(この「タメ口」なんていうのも使わないほうがいい言葉です)をきいては,小論文の目的である「読者(この場合は採点者)を説得する」ということになりません。ただし,たとえば「現代の若者の文化」といった設問に答えるために,ダサい・ムカツクなどという言葉を例としてあげたい時はどうするのか。そうした場合には「」にいれる,あるいはカタカナで書きましょう。そうすれば,あなたの言葉使いではなく,論文のための事例として扱っていることになるのです。これは,実際に書いたもの添削してもらうことで,身につけるのが一番はやいといえます。

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