添削の特徴と具体例

大学受験の小論文を例に取り、同じ答案を添削した場合、他所の添削とどのように違うのかを御覧頂きます。

※このページは、webに掲載された、他社様複数の添削例を参考にして、作成させて頂きました。この場を借りて御礼申し上げます。

特徴①.赤字・コメントの量

※画像クリックで原寸大表示

一般的な小論文添削

WIEの小論文添削

 一目見ただけで、赤字が入った箇所、コメントの量が圧倒的に違うことにお気づきでしょう。

 一般的な添削は、原稿用紙の余白にコメントが書かれるだけですが、WIEのコメントは、別紙にたっぷりと記載されます。

 別紙に書くことで、お客様に役立つ十分なコメントが出来ると共に、お客様は、答案とコメントを左右において、見比べながら学ぶことができます。

特徴②.精密な指摘箇所

一般的な小論文添削

WIEの小論文添削

 お客様のお役に立つためには、指摘すべき箇所は漏らさず指摘しなくてはなりません。

 この例で見てみましょう。 

 WIEの添削コメント(a)では、回りくどい表現であること、文をつなぐべきであること、それで生まれた余裕で、論証部分を充実させるべきであることが指摘されています。

 しかし一般的なコメントでは、この点に気付いていませんから、指摘されていません。また、WIEのコメント(c)で指摘されている、対比させる事例として適当ではないことも、指摘されていません。

 細かく細かくお客様の答案をチェックすることで、WIEは「これ以上、申し上げることはない」レベルにまで、添削の品質を高めています。

特徴③.添削コメントのお役立ち度…わかりやすくて、丁寧

一般的な小論文添削

WIEの小論文添削

e:小論文に「気がする」とだけ記すのは不適当です。小論文ですから、書き手が「思」ってそのような「気がする」のは当たり前です。しかもそれだけではただの感想ですから、何に基づき、どう考え、いかに論証して読み手を説得するかが、評価の基準になります。従って「気がする」とだけ記すのは、当たり前のことを書いて読み手をうんざりさせるだけでなく、思考が浅いことを意味してしまうのです。
「気がする」とのみ書くぐらいなら、「…だ、なぜなら…。」と書くべきです。自説には必ず論証を伴わなければならないという、論文の原則を外さないようにして下さい。

 「もっと~しましょう」というコメントはよく見かけますが、では具体的にどうすればよいか、はっきりしません。

 WIEのコメントは、何が原因だったか、どうしていけないのか、そして、どうすればよいかまで、具体的に指示します。

 こうすることで、お客様はご自分の実力を、どのようにして高めればよいか、具体的にわかるのです。

添削の具体例①.大学入試

実際の添削例は以下のようになります。

①課題文の内容把握が前提となる出題

添削例:慶応大学(文学部:2017年)

 例年、制限時間から見ますとかなり分量が多い課題文を読むことになります。その上で、設問1が課題文の内容把握=要約問題であり、設問2が解答者独自の見解を述べる問題になっています。設問1・2ともにそれぞれ制限字数は300~400字程度なので、小論文としては短いと言えます。それでも課題文の難しさ、制限時間の厳しさの点で、大学入試小論文としては難しい部類に属します。
 特に、出題年度にもよりますが、課題文は論文としての骨格がやや曖昧な、エッセイ(試論)あるいは文学作品が採用されています。そのため、解答者が小論文を書くために必要な水準で課題文の論旨(概念の相互関係)を把握することが、難しいと言えます。 本年の課題文は、そのなかでは比較的論文としての性格の強いものです。ただし、初等中等教育=高校学校以前ではあまり取り扱われず、高等教育=大学・大学院で初めて出会うような思考の方法が示されています。大学文学部の取り扱う範囲でも、歴史学や文学は、高等学校の地歴科・国語科・外国語(英語)などで入門的な学習をしますが、今回の文化人類学や社会学などは、高校の教科ではほとんど触れることがありません。高い読解力・思考力が要求されるのは、例年通りです。 なお、通信欄で御質問をいただいておりますが、答案の該当箇所で検討することにしましょう。  お送りいただいた答案は、誤字脱字や主語述語の不対応といった国語的な問題はなく、解答者の国語力は高いと判断できます。また、設問の要求にも対応しようとしています。設問の要求を無視した、いわば見当違いな答案が多いなか、この点は評価できます。 しかしながら、設問Ⅰでは課題文の重要概念(論点)に見落としがあり、合格圏を逃しています。設問Ⅱで苦戦しているのは、この設問Ⅰでのミスが原因です。設問Ⅰで用意した概念(論点)が不足しているため、「何を書いたらよいか」分からなくなったのでしょう。 ただし、合格圏を逃したとは言え、昨年度までの受講生で、めでたく合格された方が初めて提出された答案と比べても、遜色のない水準にあると言えます。ここから出発して、この演習を通じて、合格圏の実力を確実に身につけて参りましょう。  答案に対するコメントは、小問ごとに解説の後にまとめてあります。abc……の記号は、答案のものと対応しています。なお、特にコメントのない修正は、単純な語句の誤りや、分量調整のためのものです。

設問Ⅰ
             (解答本文は省略)
(添削コメント)
 「要約しなさい」とありますので、課題文の内容把握が問われています。こうした設問に対して、解答者独自の見解や解釈を書きますと、大きく減点されてしまいます。毎年初めての提出でこうした失敗をする受講生が少なくないのですが、この答案はそういったミスはありません。課題文の重要概念(論旨)を抽出して、その相互関係(論旨)を再現する、という要約の基本を守っています。
 しかしながら、最重要概念で見落としがあります。そのため、課題文の論旨が正しく再現されていません。そのため合格圏とは申せません。特に設問Ⅱに関係する重要概念が答案にはありません。詳しくは該当箇所で詳しく述べますが、設問Ⅱで最重要概念になります「分け与えること」に対して、課題文は複数のあり方を示しています。これが十分に答案に盛りこまれていないのです。
 細かい国語表現なども指摘しましたが、以上の点が改善のポイントになります。なお、現在制限字数をほぼ使い切っていますので、新しく概念を追加するためには、字数調整が必要になります。それも含めて、指摘して参ります。

a:課題文の見解と解答者の見解を区別するための記述ですので、あって誤りとは申せません。ただ、この設問Ⅰのように課題文の見解しか設問が要求していない場合には、なくても誤解の余地は生じませんね。分量調節のためには割愛しても構わないことになります。
A:以下で述べられている諸特徴は、「トングウェ人」のものであって、全「タンザニア人」に妥当するとは、課題文は述べていません。致命的な減点に繋がる誤読です。
B:aに対応して記述を調整しました。ただし、完全ではありませんので、再提出ではご自身で、適当な文を考えてください。
b:現在の記述でも減点になるようなことはありませんが、他の改善によって分量が増加すると思われますので、その調整です。最終的に字数に余裕ができるようでしたら、現在のままとしても構いません。
C:「情の経済」という概念自身が説明(概念規定)なしでは理解できません。したがって、これを説明なしで要約に盛りこみますと、説明不足・理解困難として大きく減点されます。「最低限の生存維持を最優先」「相互扶助システム」「発展を阻む」といった、「トングウェ人」社会の特性をより適切に説明する概念を答案に盛りこむべきです。D:この部分で課題文は、「上野村」の事例を挙げています。そこでは「二倍つくる」「アソビ」「実りを分かち合う」などの概念が使用されています。これは*「最少生計努力」や「食物の平均化」とは対応・対立する概念ですね。そこから、「嫉妬やうらみ」「呪い」とは違う社会の構成原理が出てくるでしょう。 課題文ではこれに関して、タンザニアの農村と上野村の「アソビ」の違いや、「計画性」等について比較対照していますね。 以上のコメントを参考にして、再提出をしてください。少し難しいかも知れません。ただ、次の設問Ⅱを前提にして、課題文が「分かち合い」のあり方をどのように考えているか、という視点で事例を整理していくとよいでしょう。

設問Ⅱ
             (解答本文は省略)
(添削コメント)
 設問Ⅰで課題文の内容把握=要約に失敗しているために、この答案の冒頭にある「分け与える」の概念規定(説明)が不適切です。議論の前提となる概念が不適切なために、それ以後の議論も低く評価されることになります。 したがって、設問Ⅰの要約がどうなるかが確定しませんと、改善の方針が立たないことになります。一応、私ならこう考える、という視点を紹介しますので、再提出の参考にしてください。
A:冒頭でも触れましたが、設問ⅠのDで指摘しましたように、「嫉妬やうらみ」によらない、「上野村」型の「分かち合い」があり得ることを、課題文は認めています。現在のように「トングウェ人」型の「分かち合い」だけが「(課題文)筆者」の考えとするのは誤りです。したがって、設問が冒頭で要求する「次の文章を読んで」を満たしていないことになります。非常に低い評価になってしまいます。
B:Aで躓きましたので、「筆者と同様に」という記述が無意味になっています。
 ここで、設問Ⅰの指摘にそって、同じ「分け与える」にしても、自己の必要分を確保した上で「分け与える」上野村と、こうした考慮をせず、お互いに必要最低限の生産分しか用意せずに「分け与える」トングウェ人で随分違います。このことを指摘できると、両者の比較対照をすることが可能です。
 上野村であれば、十分な余剰があり一方的に与えるだけの人と、不足分を一方的に与えられる人が存在します。しかし、トングウェ人では原理的には与えた分をどこからか与えて貰わなければ、飢える人が出てしまいます。飢餓を避けるという意味では、上野村の方が優れているといえるでしょう。 しかし、安全と思われる上野村も、評価基準を変えれば「必要量の二倍」という資源の浪費・労働力の無駄をしているともいえます。上野村では、「あまりにも少ない貨幣」ではありますが、村外との交換によって、この問題を解決しています。
 しかし、これが地球環境と言った外部の存在しない閉じた系だとしますと、破棄される無駄な生産を毎年行っていることになります。これは、それだけ地球環境に負荷をかけ、環境問題を悪化させるものと言えるでしょう。
 もちろん、これ以外の視点でも構いませんが、「分け与える」行為が複数あることに気付けば、その比較が可能になります。そのなかで、解答者が考える望ましい「分け与える」行為・社会とは何かを考えることができるでしょう。通信欄にありました「何を書いたら分からない」と言うことはなくなると思います。 最後に「分け与える」ことそのものを否定して、個々人の能力に応じて生産したものを、相互に交換すればよく、努力を怠って少ししか生産できないものが、僅かしか交換できなくてもそれでよい、という見解も不可能ではありません。
C:大きく取り消し線をしましたが、「トングウェ人」型ではなく、「上野村」型の「分け与える」が成立する可能性もあると思います。少し多めにつくって、足りない人に分けてあげる、という行動が起きないということを論証しない限り、このような立論は不可能です。
 逆に、Bの議論で上野村型の「分け与える」社会は例外であって、基本的に多くの人がトングウェ人と同じように振る舞うことが論証できれば、この部分はほぼ現在のまま活かすことができますね。
D:Cと同様です。A以下の改善で、全体の立論が変わる可能性がありますので、それとあわせてこの部分も見直してください。
 以上のコメントを参考にして、再提出をしてください。 設問Ⅱでは、解答者がどのような立場に立つか決めていただくために、具体的な文案ではなく、考え方のヒントだけにした箇所が多くなりました。難しいかも知れませんが、ぜひ改善に挑戦してください。

②設問文だけからなる出題

添削例:東京藝術大学(美術学部芸術学科:2019年)

 最新年度の過去問ですが、「鏡」をどう扱うか、皆さん苦労されています。18年の「金」に続いて、あるいはそれ以上に扱い難いテーマだと言えます。
 通信欄でご質問をいただいておりますが、設問の要求が「美術と鏡について自由に論じなさい」という抽象的・一般的なものですので、これに対応する具体的なものであれば何を採り上げてもよいことになります。設問の要求が漠然としていますので、それに反しない範囲であれば、解答者の議論しやすい題材を選んでよいのです。知識として知っている・実際に見たことがある作品であれば、議論の材料が豊富にあるでしょうから、鏡の利用法を題材にされたのは、適切な選択だと思います。
 なお、まだ19年課題の提出者は多くないのですが、他にも『ラス・メニーナス』を採り上げた受講生がいます。設問の要求は「美術」ですから、工芸作品や建築などでもよいのでしょうが、芸術学科ということもあり平面芸術(絵画)を挙げている方がほとんどです。ちなみに、van Eyckの『アルノルフィニー夫妻の肖像』や van Gogh他の自画像を取り上げている例もあります。逆に工芸や建築は難しいのか、今のところ具体的な作品を挙げている例はありません。
 さて、お送りいただいた答案は、初回提出から合格圏と申せます。解答者の用意した事例は設問の要求する「美術と鏡」に対応しており、それを分析・解釈する視点や方法も適切です。 したがって、採点上大きな問題になる箇所はありません。実際の試験場では制限時間がありますので、これ以上の完成度を求めるべきではないでしょう。時間切れになり、未完成の状態で提出するようなことは避けるべきです。もし時間があるようなら、誤字脱字の確認などをすべきです。

              (解答本文は省略)
(添削コメント)
A:今回、私が第一に考えた改善点です。現在の答案では、鏡に関する作品を一つ取り上げて、それを分析・考察する形です。制限時間のある入試小論文では、時間に併せて途中で打ち切っても、全体の論旨に矛盾や飛躍が生じにくい方法です。 ただ、逆に言えば全体を統一する視点がない書き方でもあります。これに対して18年出題の答案では、先に「金」に関する一般論を示した上で、それに妥当する具体例として作品をあげ、その分析・考察をしていました。 こちらの形ですと、一般論で挙げた特性に対応する作品を取り上げないうちに時間切れになる、といった危険があります。しかし、論文としての完成度は、個々の作品をバラバラに取り扱う形式よりも高くなりますね。
 今回は、この構成に挑戦していただきましょう。答案の*をした箇所は、「鏡」の「美術(作品)」に対する効果・利用法といえますね。これをここにまとめましょう。例えば、次のような書き出しです。 鏡の美術作品での効能として、絵画なの平面芸術では、二次元空間を三次元に拡張する機能がある。また立体芸術では、光を反射する性質を利用して……といった形です。100~200字を目安に「美術と鏡」の関係を概観する段落を一つ設けましょう。
B:制限字数がありませんが、Aで字数が増えますので、他の箇所はできるだけ簡潔にしました。なお、Aで用いた重要概念(論点)を答案の他の箇所でも統一的に使用するなど、Aにともなう調整に注意してください。
C:一文が長いと、論旨が読み取り難くなりますので、私ならここで文を切ります。
D:Aの改善によっては、概念の変更が必要になるかも知れません。例えば、Aで「立体作品」という概念を使用したのであれば、ここも同じ概念で統一しましょう。
E:誤りではないのですが、どのよう美術的効果があるのか、位置付けがやや曖昧です。Aで立体作品に対する鏡の意味や効果を整理する際、再検討してください。
F:大変興味深い作品の例ですが、それだけにもう少し丁寧に分析・考察をしましょう。この作品は、物体としての鏡は用いず、鑑賞者の持つ鏡に関する常識的な意識を利用している点が重要です。こうした鑑賞者の意識構造との関係を指摘しますと、優れた作品論になると思います。こうした作品の本質は既に理解しておいでのようですが、もう一息言語化・概念化の工夫をしてください。 以上のコメントを参考にして、再提出をしてください。
 すぐれた作品鑑賞・理解の力をお持ちですので、それを文章化することをもっと研究して欲しいと思います。もっとも、このお願いは大学受験の水準を超えているかもしれません。大学のレポートなどで初めて必要になる視点といえます。難しいかも知れませんが、是非再添削ではこれに挑戦してください。

 

※各講座の紹介ページにも、添削例を掲載しています(一部掲載していない講座もあります)。志望先の過去問添削例をご覧になりたい方は、講座一覧より、ご希望のページへお進みください。

 

添削の具体例②.昇進・昇格試験

昇進・昇格試験の評価ポイントは多岐にわたりますが、重視されるのは、
①設問の要求に正しく対応していること
②論旨構成が適切になされていること
の2点です。これらに失敗している答案の添削例を紹介します。

①設問の要求に正しく対応していない例

 設問文の重要概念である【重要概念】とご自分の役割が関係づけられない、とのことですが、これは出題側からみますと、致命的な減点要素となります。厳しい言い方になりますが、出題側=経営側が重視している問題を通常業務の中に位置づけられないのですから、ご自身の担当業務が、全社的な視点でどのような意味を持つのか理解していないことになります。これでは、後輩や部下の指導に際して、作業手順と言った機械的な指導は出来ても、業務の意味などは教えられないからです。
 もっとも、所属部署・担当業務によっては、全社的な方針との関係付けが難しい場合も少なくありません。ただ、それでも全社的な方針・目標とご自身の業務がどう関係しているかを考えることが、社内で背金にある地位に就く=昇進・昇格の絶対条件になります。 また、経営陣も全社的な方針を設定する際、出来るだけ社内の全部署に関係させようとします。そうでなければ全社的な方針とは言えませんし、関係が無いと判断した部署では、社員の士気が下がってしまいます。
 御社ではその点を留意して、【重要概念】をさらに3つの側面に分けておいでですね。
【重要概念A】現場のニーズに応えます。
【重要概念B】各人が能力を最大限に発揮します。
【重要概念C】未来の社会を切り開きます。
 逆に言えば、3つの側面に沿って【重要概念】を分析し具体化していけば、ご自身の所属部署・担当業務との関連づけが可能だと思います。

 ここからは、お送りいただいた答案を見て参ります。冒頭では厳しいことを申し上げましたが、御社に限らず全社的な方針の理解を前提とする出題では、皆さん苦戦しています。このような出題に対しては、設問文が使用している重要概念、とりわけ全社的な方針・目標・スローガンが、実際の業務ではどのような具体的課題となって表れるかを把握することが、設問の要求に応える大前提になります。しかし、多くの人は自分の担当業務に対して、所属部署内での位置付けは理解していても、全社的なそれは意識していない場合が少なくありません。お送りいただいた個人報告書で、「組織を見渡す視点」「極めて狭い範囲での取り組み」といった指摘があるのは、この問題と関係があります。
 そこで、まずは設問文に立ち返って、答案で答えるべきことは何かを核にしてみましょう。設問文の重要概念(論点)に①②③……の番号をつけてみます。
■ ①10年後の社内外の環境の変化を踏まえ、②組織の【重要概念】を具体的に述べよ。
■また、③AI(主任)役割としてそれを④伸長していくための方法を、⑤時間軸を明確にして具体的に書きなさい。
 そうしますと、答案は次のような構成になるはずです。
1.解答者による①10年後の社内外の環境の変化の予測
2.①の予測の中で必要となる②組織の【重要概念】のための施策。「具体的に」とあるので、解答者の具体的な業務に関係する施策となります。
3.2の施策の実現=④伸長していくための方法を述べます。このとき、あくまで解答者個人が③AI(主任)役割を果たす、具体的な行動です。しかもそれは思いつくままに羅列するのではなく、最終的に②が達成されるまでの段階を踏んで、すなわち、⑤時間軸を明確にして具体的に述べなければなりません。
 例えば、情報の集中・共有による効率化といった④伸長していくための方法であれば、次のような記述になるでしょう。
段階1:個別の業務案件毎の改善案を統一書式に整理してコンピュータに登録する。
段階2:非効率に気付いた社員は、登録されたデータベースか類似の事例を探し、迅速に 対策が立てられるようになる。
段階3:非効率に気付くたびに個別に対応するのではなく、データベースを解析することで非効率を産む自部署全体の業務慣行や手続きの不備を分析し、根本的な解決策を立てる。
段階4:自部署で非効率が生じる構造的原因を明確にし、他部署と共有することで全社的な非効率の見直しを進める。
 ……といった具合です。さらに③AI(主任)役割として統一書式の作成、業務慣行や手続きの不備を分析、などががあるでしょう。その一方で、他部署と共有するために部署の長同士で会議を開くのであれば、それはAIより上位の管理職がすべきことになるかも知れません。
 さて、出題側の意図の確認、さらに設問文の分析から答案で何をどのような順番で書くかを考えてきました。現在の答案は、大枠ではこの構成に近いのですが、①10年後の社内外の環境の変化の予測が大雑把であり、さらにここで何をすることが②組織の【重要概念】になるのか、ほとんど考察されていません。
 したがって、単にご自身の所属部署で取り組んでいる事例を紹介しているだけで、それが設問の要求する④伸長していくための方法といえるのかどうか、考察されていません。設問の要求に関係ありそうなそうな事例が並んでいますが、関係づけそのものが不十分なのです。
 以上の問題点を克服するためには、設問の要求=書けと要求されていることに遡って再検討し、全面的に書き直して頂くことになります。そのため、具体的な改善案ではなく、問題点の指摘と、考え方のヒントを示す箇所が多くなります。
 答案に対するコメントは、添削本文の後にまとめてあります。ABC……の記号は、答案のものと対応しています。なお、特にコメントのない修正は、単純な語句の誤りや、分量調整のためのものです。
            (添削本文は割愛)
個別のコメント
A:設問文の重要概念①に対応する記述です。しかし、考察が不十分だと思われます。10年後には、ご自身の所属部署・担当業務に限っていろいろな変化が考えられると思います。以下、私なりに挙げてみます。
1)電気自動車の普及など動力システムの変化→6)環境負荷の軽減にも関連
2)自動運転など走行・操縦システムの変化
3)拠点向上の海外展開。中国→東南アジア→南アジア→アフリカ
4)労働力の変化:外国人労働者・高齢者再雇用・女性の進出
5)雇用形態の変化:働き方改革・勤務時間の柔軟化
6)環境負荷の軽減:生産の省資源化→低コスト化 この他にもご自身の所属部署・担当業務から重視すべき①10年後の社内外の環境の変化があれば、メモとして列挙してください。
 次にこうした「環境の変化」が、②組織の【重要概念】にどのように関係するかですが、これに関しては【重要概念】を【重要概念A】【重要概念B】【重要概念C】の3つの側面から検討します。
 例えば、1)2)は消費者という「現場」のニーズに応えるものですから【重要概念A】の分野で【重要概念】となることに関係します。
 4)5)は労働者(従業員)も「現場」に含まれますので【重要概念A】でもありますが【重要概念B】の側面が強いですね。
 逆に【重要概念C】の観点から見ますと、1)6)は環境問題の点で、3)は発展途上国の経済向上の点で、「持続可能な社会」に貢献します。
 ここまでが、設問に答えるための下準備です。②の組織が御社全体を指すのか、解答者所属部署を指すのか曖昧でが、③AI(主任)役割、あるいは⑤時間軸を明確にして具体的とありますので、基本的に解答者個人の行動が問われています。そこで、下準備で挙げた①10年後の社内外の環境の変化によって必要になる、②組織の【重要概念】は、基本的に解答者の所属部署・担当業務に関係する分野に限定してよいことになります。
 以上から、答案の冒頭は、例えば次のような構造になるでしょう。
第1段落;①10年後の社内外の環境の変化
 1)~6)で挙げたような事例で、御社が対応すべきものを挙げます。
第2段落:②組織の【重要概念】 第1段落で挙げた「変化」の中で、解答者の所属部署・担当業務に関係し、かつ【重要概念】に関係する項目を挙げる。その際、なぜをそれを取り上げるか=所属部署・担当業務との関係を説明する。これ以外の構成案でも構いませんが、まずは設問の要求に対応した構成と内容にしましょう。
B:大きく取り消し線をしましたが、現在の記述が適切かどうかは、Aの改善次第です。Aで、現在の答案と同じ「環境変化」を指摘し、かつそれが解答者の所属部署・担当業務と関係付けられれば、この部分は生きてきます。
 逆にAで取り上げる「環境の変化」が現在と変わってきますと、大規模な書き直しになります。
C:この部分は、ABの改善次第です。ただ、現在のBを前提にした場合、概念の関係付け=論旨の構成が不十分です。例えば、※※※の「新たな素材や技術を提案し、顧客のニ-ズに応え」は前段落の**新材料や技術の供給と対応してます。同じく、※※※※ビジネスを創ることは、*新規事業やサービスを創る「提案型ビジネス」と関係するでしょう。しかし、※取引先や海外現地法人とのネットワ-クや、※※多岐にわたる商品知識の強みは、これに対応する「環境の変化」が存在しません。したがって、答案の論旨から逸脱した概念(論点)であり、設問の要求との関係づけのない議論になっています。こうした記述は論旨の混乱・破綻として、大きく減点されることになります。
D:Aでもコメントしましたが、設問の要求する「組織」の範囲が曖昧です。この曖昧さを避けるために、解答者の方で概念規定をするとよいでしょう。なお、これはあくまでも私が一般論として想定したものです。御社内で「組織」の範囲をどのように規定しているか、社内文書などでどう扱っているかを参照して、正確に規定してください。
E:ここも取り消し線をしましたが、Bと同じく内容それ自体の問題より、他の箇所との関係付け=論旨構成が不適切なためです。「軽量化」「エレクトロニクス」は、**新材料や技術の供給に対応しますので、※※※「新たな素材や技術を提案し、顧客のニ-ズに応え」とつながっています。そこで、「環境の変化」のなかで、【重要概念】を実現するために※※※を位置付けることが出来れば、この段落の記述はほぼ現在のまま活かすことができるでしょう。しかし、A・Bで※※※の位置付けをしない、あるいは現在と大きく変わるようでしたら、この部分は全面的な書き直しになります。
F:以下の記述は、ここまでの改善で取り上げている事例が、設問の要求と適切に関係付けられなければ、全面的な再検討が必要です。したがって、現時点では内容に踏み込んだ改善案は示すことが出来ません。国語表現などの細かいコメントが多くなりますことを、ご承知おきください。
G:Dと使用概念を統一しましょう。重要概念をみだりに言い換えますと、概念の関係=論旨が読み取りにくくなります。もっとも、長い概念が何度も繰り返し出てくるのは、読みにくい上に、制限字数のある試験答案では、字数の無駄です。このあたりのバランスに留意してください。
H:段落を改める際の原則は、あくまでも「書き込んだ内容」=「書く前に頭の中で整理した視点や問い」が変わる箇所で入れる、と心得てください。無意味に改段するのは、読み手が文の論理を把握するのを妨げ、文の評価を下げます。また文脈が大きく転換しているにもかかわらず、段を改めないのは、同様に評価を下げます。
I:所属部署ではごく一般的な略語なのでしょうが、読み手=採点者への配慮に欠けます。特に昇進・昇格では、自部署以外の人が採点者になりますので、彼(女)らに理解できない語を使うのは、減点の対象になります。特に管理職に昇進後は、他部所と連絡・調整が重要な仕事になりますので、自部署内のみに通用する略語や隠語を使うのは、禁物です。 もっとも、社内報など全社員を対象にしている文章で使われている語であれば、使用しても構わないとは言えます。それでも初出位置では()内に正式名称を示すなどの配慮をするとよいでしょう。
J:この「他の方」は、どのような範囲を想定しているのでしょう。またそれと関係しますが「巻き込む」ことは、「AI」の「役割」なのかどうかも明確にしてください。
K:Jと同様の問題です。「AI」の「役割」といえるのでしょうか。また、御社の「AI」が部下を配置される管理職なのか不明ですが、部下ないしは後進の指導は「役割」ではないのでしょうか。個人としての業務遂行やそのためのスキルについては詳しく述べておいでですが、それが③AI(主任)役割として、あるいは④伸長していくための方法として妥当なのか、私には疑問です。あるいは、●から③として行動するおつもりなのでしょうか。そうであれなら、どの時点で「AI」に昇進するのか、⑤時間軸を明確にして具体的に記述してください。K:このような議論をするのであれば、Aで「【重要概念C】=各人が能力を最大限に発揮します」に言及しておく必要があります。

②論旨構成が適切になされていない例

●弊社WIEでは、優れた小論文の条件を、次の4項目にまとめています。
(ⅰ)設問の要求に的確に応えている。
(ⅱ)整理された形で議論が展開されており、論旨が一貫している。
(ⅲ)答案の内容が、踏み込んだものになっており、説得力がある。
(ⅳ)修辞が優れている。
 上の項目ほど優先順位が高く重要で、例えば、項目(ⅰ)で大きく失敗していると、項目(ⅱ)・(ⅲ)・(ⅳ)がいかに優れていても、採点対象外(=0点)の答案となります。
 そこで、優先順位の高い項目「(1):設問の要求に応えているか」と「(2):論旨の一貫性」の観点から、まずは、答案を評価して参ります。 ●提出していただいた答案が、設問の要求に応えているか検討するためには、設問を分析して、正しくその内容を理解しなければなりません。設問の骨格は、次の三要素となり、その三要素の説明と、その相互関係を示すことが重要となります。

★三要素の説明
(1):<「大状況」について>
  御社を取り巻く環境変化の中で、激しいものを取り上げてください。
(2):<「業務で重要なこと」について>
 現場の実態に即したものとして、解答者の業務で最も重要なものを提示してください。 (3):<「昇格後の行動」について>
 昇格後に、周囲と協調してどのような行動を取る予定か説明してください。また、その際には、具体的な記述により、【昇級後の職階】に求められる複数の役割について、なるべく多くの役割をこなすことをアピールしてください。
★三要素の関係の説明(=論旨に一貫性を与えるために必要)
(4):<「大状況」と「業務で重要なこと」の関係>
 解答者が取り上げた「業務で重要なこと」が、「大状況(=御社を取り巻く激しい環境変化)」と、どのように関係しているか示してください。この項目について条件を満たした論述を成功させるには、「業務で重要なこと」と関係の深い「大状況」を、あらかじめ厳選して提示しておくことと、「業務で重要なこと」と「大状況」の関係を示す説明能力が求められることになります。
(5):<「業務で重要なこと」と「昇格後の行動」>

●上記の5項目について、答案の内容を評価すると、次のようになります。
(1)→○
 「自動運転や駆動方式の変更」を、「大状況(=環境変化)」として説明しています。この環境変化は、御社に限定されず、自動車業界全体に大きな影響を与えるものです。ただし、仮に後の議論にうまくつなげる方法が浮かばないのであれば、別の「大状況(=環境変化)」に変更した方が良い可能性があります。
(2)→△
 解答者は、「業務で重要なこと」として、「生産マスターの設定業務をタイムリーかつ正確に行うこと」及び、「商品開発プロジェクトの推進」の二つを挙げています。ただし、制限字数を考慮すると、「業務で重要なこと」を一つに絞った方が良いでしょう。不可能とまでは断言できないものの、相当に論文作成能力が高くないと、「業務で重要なこと」を二つ挙げて、設問の要求を満たした答案を、制限字数内でまとめるのは、困難です。  仮に私が答案を作成するなら、「商品開発プロジェクトの推進」を中心に議論をまとめ、その一部として、「業務の自動化推進」に言及するようにします。
(3)→×
 設問は、昇格後(=未来)の行動計画を説明することを求めており、過去の行動を説明することは求めていません。提出していただいた答案は、過去の行動の説明に相当の字数を割いており、大きく減点されます。
 なお、【昇級後の職階】に求められる複数の役割についてですが、これについては、ここでは細かく検討しません。後ほど、検討します。
(4)→×
 解答者が取り上げた「業務で重要なこと」が、「大状況(=御社を取り巻く激しい環境変化)」と、どのように関係しているか、読み手には全く理解できません。解答者が取り上げた「環境変化」は、解答者が注目した「業務で重要なこと」と結びつけにくいので、できれば別の環境変化を挙げたいところです。ただし、両者を結びつけることは不可能ではありません。
【答案骨子例】
 自動運転や駆動方式の変更といった、当社を取り巻く激しい環境変化により、膨大な開発費が必要となっており、当社の経営を圧迫している。この状況下で当社が生き残るには、既存事業を従来以上に徹底的に効率化して収益を得ることが必要である。既存事業の効率化の対象には、私が担当する「商品開発プロジェクトの推進」の業務も含まれる。この業務で重要なことは、開発期間短縮と、車両製造でより多くの利益を確保できる仕組み作りである。
★注):開発期間短縮→周囲との協調が必要/車両製造でより多くの利益を確保できる仕組み作り→RPAによる業務の省力化
(5)→△
 昇格後の行動計画が今一歩抽象的で具体性に乏しいため、昇格後の行動が解答者が取り上げた「業務で重要なこと」に、強く貢献するとまでは、言えません。昇格後の行動計画をより具体的に説明すれば、この問題は解決できるはずです。
※ここまでの答案内容の分析から、論旨の一貫性が確保されていないことが明確となりました。
●続いて、項目(ⅲ)の答案の内容の説得力について検討します。ここでは【昇級後の職階】に求められる複数の役割を中心に考えてみましょう。添付していただいた資料を参考にすると、次のようになるでしょうか。

★意識・姿勢規準
・グローバルでの経営環境変化と競争を常に意識し、業務目標・課題の達成に強いこだわりを持つ。
→解答者は、グローバルな経営環境変化である「自動運転・駆動方法の変更」を掘り当てています。この環境変化を、解答者が取り上げる「業務で重要なこと」と結びつけて議論できれば、等級規準が求める意識・姿勢の条件を満たすことになります。

・他部門の業務に関心を持ち、自分との関連・影響を常に念頭に置きながら、三現主義・PDCAに基づき、スピード感を持ち、粘り強く主体的に行動する。
→提出していただいた答案でも、他部署との協調に言及があるものの、等級規準が求める意識・姿勢の条件を満たしていることを、強くアピールするためには、協調をする上での注意点にも言及すると良いでしょう。具体的には、これまでの他部署での協業でうまくいっていなかった点を改善することや、他部署との協業がうまくいっていることを、よりうまく活かすにはどうすればいいかを検討するといったことです。
 他部署の業務に関心を持っていないと、具体的なアイデアは出てこないので、部外者である私には、これ以上詳しく説明することはできません。

・キャリアパスを意識したうえで、自己の能力を向上させるために必要な知識・スキルについて自ら学ぶ →これには、専門職としての知識・スキル(例:RPAプログラムの作成スキル)もあれば、管理職としての知識・スキル(例:コーチングのような人材育成のスキルや、部下に気持ちよく働いてもらえるような職場の環境整備により、担当部署が成果を上げるようにするノウハウなど)もあります。
 提出していただいた答案は、専門職として新たに学ぶ知識・スキルに言及がなく、また管理職としての知識・スキルにも言及がありませんでした。専門職と管理職の双方の視点で、知識・スキルに言及する必要まではないものの、専門職と管理職のどちらかの視点では、新たに習得する予定の知識・スキルに言及したいところです。

★能力規準 ・必要知識:担当業務についての専門知識に加え、関連業務の一般的知識がある。 →協業する他部署の業務を簡単に紹介することで、この条件を満たすことができます。これに対して、提出していただいた答案は、「前工程、後工程の部署」との記載があるだけなので、関連業務の一般的知識があるのかどうか、読み手は疑うことになります。
・専門スキル:判断を自律的に臨機応変に行い、実用価値の高い新しい企画を十分に打ち出すことができる。
→提出していただいた答案は「新しい業務の自動化案を企画」との言及があるものの、これが実用価値の高いものなのかどうか、読み手は判断できません。後で手直しがあっても構わないので、現時点で考えている「素案」や」「試案」を、答案の中で説明すると良いでしょう。具体的には、どのような意味でその企画が新しいのか、自動化の対象となる業務領域の変化や、自動化の対象となる定型業務の変化の観点から説明すると良いでしょう。
・様々な価値観や強みを持った人々と協調し、多様な利害関係者の意見に耳を傾けることができる
→利害関係者には、部下や上司、関連部署の者、取引先の企業の者といったものが含まれます。周囲の人々に関心を持っていないと、この項目で優れた内容の答案を作成することはできません。技術者は一般に、対人関係力がそれほど高くないと思うのですが、人並みの対人関係力があることは、示したいところです。例えば、部下の得意不得意や専門性に言及すること、あるいは、関連部署からの要望に言及すると良いでしょう。関連部署からの要望については、後工程の部署が業務をしやすいように、解答者の所属部署がどのように業務を遂行すべきか、といった視点で論じることもできるでしょう。

・組織目標や課題解決に向け、メンバーと丁寧なコミュニケーションを通じて意識を高め動機づけすることを意識できる。
→部下の戦力化に関する言及です。提出していただいた答案では、「習得したRPAプログラムの作成スキルを後輩へ継承」とあり、部下の戦力化に言及があるものの、「動機付け」の具体的方法に言及がありませんでした。これは一例ですが、業務の自動化にどのような意義があるのか、部下(メンバー)にわかるように説明することが、「動機付け」にあたります。
・受け取った経営及び関連する情報を咀嚼して、自己の業務に関連できる。
→御社の中期計画や、最近の社長訓示と、解答者の業務の関連を説明できるのが好ましいと申せます。御社を取り巻く激しい「環境変化」を説明する際に、御社の中期計画を参考にし、また、御社の中期目標が言及する重点項目と、解答者の業務の関係を考察するようにすると良いでしょう。  答案では組織目標として、「業務の自動化推進」がありますが、これは、御社の中期計画とどのような関係になっているでしょうか?御社の中期計画を今一度熟読すれば、「業務の自動化推進」に、御社の中期計画が言及していることを発見するかも知れません。また、「業務の自動化推進」にどのような意義があるのか、御社の中期計画の中で説明しているかも知れません。 ※ここまで、答案の内容について言及しました。

●最後に、項目(ⅳ)の修辞(=文章表現の技術)についてです。ここまでに検討した三項目、つまり「(ⅰ)設問の要求に応えること」「(ⅱ)論旨の一貫性」「(ⅲ)答案の内容の説得力」と比較すれば「(ⅳ)修辞」は、優先順位が低いものの、読みやすい文章とするには「(ⅳ)修辞」も優れている方が好ましいと申せます。
 「(ⅳ)修辞」については、答案に沿って具体的に説明した方がわかりやすいので、以下で説明します。なお、「(ⅳ)修辞」について細かく問題を指摘すると、答案の水準を向上させる上で、優先順位の高い項目がわかりにくくなるので、今回は、ザックリとした「(ⅳ)修辞」の指摘で済ませます。修辞の問題点に気づいていても、あえて指摘しない箇所が多くあるのですが、この点はご了承ください。

●以下では、答案に沿ってコメントします。
             (添削本文は割愛)
個別のコメント
A 設問が要求する、「大状況(=御社を取り巻く激しい環境変化)」と、「(解答者の)業務の重要なこと」に言及している点は、評価したいところです。ただし、「大状況(=御社を取り巻く激しい環境変化)」と「(解答者の)業務の重要なこと」が、どのように関係しているか一切説明がないため、論旨に一貫性がないとして大きく減点されます。 修正の仕方の例は、先に【答案骨子例】として説明したので、参照してください。

B 「(解答者の)業務の重要なこと」の二つ目を提示しています。
 ただし、制限字数を考慮すると、「業務で重要なこと」を一つに絞った方が良いでしょう。不可能とまでは断言できないものの、相当に論文作成能力が高くないと、「業務で重要なこと」を二つ挙げて、設問の要求を満たした答案を、制限字数内でまとめるのは、困難です。 仮に私が答案を作成するなら、「商品開発プロジェクトの推進」を中心に議論をまとめ、その一部として、「業務の自動化推進」に言及するようにします。

C 過去の行動を説明することを、設問は要求していません。こうした、設問の要求から外れた記述が増えるほど、答案の評価が低くなります。既にRPAを導入したのであれば、RPAを導入するだけでは、解決できていない業務上の課題を、最初から取り上げて論じるべきでしょう。

D 昇格後の行動計画を述べています。「【昇級後の職階】に求められる役割」について、複数の項目に言及しようとした努力は、評価したいところです。ただし、ほとんどの記述が、形式的な言及にとどまっており、議論の内容に説得力がありません。できる範囲で構わないので、より具体性を高めた議論とすることで、説得力を高める工夫をしてみてください。なお、具体性の高め方については、先に説明した通りです。

a 実用文に「です・ます」の文体(敬体)を用いてはいけません。なぜなら字数を多く必要とし、述べるべき内容が薄くなるからです。「だ・である」の文体(常体)に書き改めて下さい。なお文体の不統一はもっといけません。