昇進・昇格試験の解答例19

9) ケーススタディ形式

課題

 A係長は、X課Y係の係長2年目である。部下はB主査(40 代)と C主任(30 代)の2名であったが、今年4月の人事異動で、新たにD係員(新卒)が配属されることとなった。
 A係長は、B主査・C主任とも話し合い、前年度にC主任が担当していた業務をそのままD係員に担当させるとともに、C主任にD係員の指導役を任せることとした。C主任も自信満々であった。D係員の配属後は、C主任が担当業務の引き継ぎを一通り行い、あとは仕事をしながら覚えていく感じで、その後も逐一丁寧に指導する姿が見られていた。
 異動から2か月程経ったある日、C主任と2人で残業する機会があり、D係員の成長具合を何気なく聞いたところ、「D係員の成長がほとんど見られず、指導に行き詰まっています。何回指導しても、メモは取らない、自分で考えない、確認不足でミスは多いといった状況で、つい叱ったところ、だんだん私ではなくB主査を頼るようになってきています。もう少ししたら繁忙期に入るので、このままだとフォローしきれるか不安です。」と悩みを打ち明けてきた。
 どうやら、D係員の回ってない業務をC主任が引き取って処理することもあったようである。
このような状況で、あなたがA係長であれば、今後どのように対処していくか、係長の果たすべき役割を踏まえたうえで、考えを述べなさい。

文例案(受験者の担当業務を問わない)

 課題文の状況を招いた原因は、本来係長の責任で係全体で行うべき新人教育をC一人に任せたことである。また、OJTに不可欠な同時に担当する期間を設けずに、引き継ぎだけでDに業務を移行したことも不適切であった。このため、Cによる説明だけではDは実務が理解できなかった。そのため要点が分からず、メモが取れなかった。これでは、何を自分で考えるのか、ミスを防ぐ要点はどこか分からず、これがCには成長がないと見えた。この状況で叱責されたため、DはCに苦手意識を持ち、Cを避けてBを頼るようになった。
 以上の原因に対する解決策の一つとして、A係長の責任で、CとDに同一業務を担当させる。これによって、Dに適切な業務を体験でき、効果的なOJTとなる。同一業務二人体制となり非効率的だが、これまでY係は3人体制で、Dの配属後も業務量の急増はないので、対応可能である。実際、現在もDの業務をCが引き取っているので、同一業務にCとDを同時に配置しても、時間外勤務の増加はないと思われる。
 これともに、BにもCの業務を一部二人体制として手伝うようにする。このことで、CがDの指導に注力することで増加する負担を、BがCの業務を支援することで軽減する。しかし、もっと重要なことは、現在Dが信頼を寄せているBの業務指導・後進教育を、Cにも体験してもらうことである。したがって二人体制とする業務は少なくて良い。Cの業務量軽減は限定的でも、CのDに対する指導力の向上させる効果があれば良い。
 さらに係全体として、現時点でCとDの間にある緊張関係を緩和する必要がある。そのためには、A係長の主催で、業務の引き継ぎに関する係全体の会議を週一回、30分程度でも良いので定期的に行う。これによって、DがCの指導に迷った時や、逆にDがCの指示ややり方に疑問を感じた時に、係全体で情報を共有し、話し合える場を作る。現在のように、DがCを経由せずにBと相談することで生じるCとDの間の不信感を解消するができ、また全般的な業務改善の施策も生まれやすくなるだろう。A係長の役割は、同一業務二人体制の目的と期待される効果をB・C・Dに丁寧に説明し、また彼らの意見を取り入れ、この体制導入に対する同意を得ることである。
 また、係全体の会議では、議題の設定や議事進行を工夫し、特に新人のDが発言しやすい場とすることが必要である。(979字)

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