Ⅱ 試験答案の基本

昇進昇格試験論文やビジネス文章を作成する際の参考になるコラムです。

①設問の要求に応える

 課題の意図を読み取り損ねてしまっています。今回の課題をもう一度読み直してください。何を書け、と要求されていましたか?

 さっぱりしたものを食べようと寿司を注文したのに、いくら高級松阪牛であろうと、こってりしたステーキを出されたらどんな客でも怒ります。同様に論作文では、いくら「いいこと」を書こうと、課題の要求に沿っていないことを書いてしまえば、その時点で採点対象外=0点なのです。

 よく「仕事は出来るのに論作文では高評価を得られない」とお嘆きの方にお書きいただきますと、同様の間違いを見つけることが出来ます。つまり、「課題で何を問われているのか」「書いてはいけないことは何か」を二の次にし、とにかく「型にはまった文章」「どこかのお手本のような文章」を書こうとすることからくる間違いです。これは、大変よく見られる現象で、学生時代以来「一問一答型」「暗記型」の学習にあまりにも慣熟しすぎてしまいますと、TPOに応じた、論理的なものの考え方が出来なくなってしまうのです。

 答案を書く前に、まず今述べた二点、すなわち「課題で何を問われているのか」「書いてはいけないことは何か」をよく考え、それに対してまっすぐ答えるようにしてください。「課題に正面から取組むこと」、「知ったかぶりをしないこと」は、論理的な文章を書くための大原則なのです。

 実用文は、書きたいから書く場合もありますが、ほとんどは何らかの要求に応じて書くものです。それは具体的な業務の必要からであり、求めるのは所属組織の内外問わず、具体的な個人もしくは組織です。これら具体的な「何か」の要求を正しく理解し正しく応じねば、いかなる文章をどれほど大量に書こうと無意味です。定められた要求に応じることが、実用文で最も優先されるべき事項です。それを無視、あるいは軽視して、書きたいことを書けばどうなるか、今回の答案はその典型例と言って良いでしょう。

 このような誤りは、実際の昇進試験の採点を請け負った際、実に多く目にします。いかに文章力があろうと知識を蓄えていようと、また普段の業務成績が良好であろうと、このような答案を書けば、書くたびに必ず不合格になります。なぜか? それは第一に、文章として要求に応じていないからであることは言うまでもありません。しかしこと昇進試験という範疇に限るならば、書き手が協業に向いていないことの証拠になるからです。

 その理由は、要求されたことに従わず、好きなことを書くからです。独立の職人・芸術家ならともかく、サラリーマンはどこまで行っても組織の一部です。従って、周囲との協調、相互の情報交換(いわゆる「ホウ・レン・ソウ」)は義務なのですが、これができないことを文章で示したならば、すなわちその書き手はサラリーマンとして失格であるということを意味します。

 いわゆる平職員でさえ、この有様です。ましてや人を管理し、統制するべき管理職の意識が、他者不在であったらどうなるでしょうか。言うまでもなく、こうした人物は、管理職として登用すべきでないという判断になりますし、それは所属する組織にとって当たり前の論理です。

 今回の問いは何だったでしょうか。そして読み手は誰を想定していたでしょうか。厳しい言い方で恐縮ですが、こうした読み手への配慮を欠くならば、添削を何度受けようとも、適切なビジネス文章を書くことなどできません。

 課題をもう一度読み直し、自分が何を求められているか考えた上で、文章を全面的に書き改めて下さい。

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