昇進・昇格試験の解答例10

4) 業界動向の理解

課題

 市場が急速に変化している中、当社も構造改革の転換期にきている。構造改革を成功させるため一人一人の主体性が重要になってくるが、あなたはこの主体性をどうとらえ、どのように行動しているか、または行動したいか。

文例案―法人営業部門

 長く当社の主力商品であったプリンターや複写機は、企業・個人いずれもすでに広く普及しており、売り上げは頭打ちの状態である。さらに、テレワークの拡充などによって、企業各社では紙ベースの仕事はさらに減少する。個人・家庭向けでも年賀状をはじめとする紙ベースでの情報記録や交換は、さらなる減少が予想される。かつては当社の主力商品であったカメラ部門に生じた以上の急速な市場の変化が、プリンターや複写機部門でも起きている。
 この変化に対応するためには、従来に代わる主力商品の開発と、それに伴う販売方法・商品管理、さらには人事面での対応など、全社的な構造改革が必要である。すでに企業向けオフィス機器では、従来のリース方式からMPSへの転換が進んでいる。さらにより大きな変化として、M&Aによる医療・理化学関連部門の強化など、新たな商品・サービスの供給体制が確立しつつある。
 また、商品市場ほど急激ではないものの、労働市場の変化も深刻である。少子化による働き手不足は日本経済全体の課題である。これを解決するためには、労働生産性の向上とともに、多様な勤務形態を認めることで、より多くの人が働ける環境づくりも重要になる。
 私の所属する法人営業部門でも、これらの変化への対応が求められている。役員秘書として私も、上長からの指示に従うだけではなく、新しい環境に適した仕事のあり方を考え、実現していかなければならない。これが、私の考える主体性である。
 具体的に取り組みたいことの第一は、顧客情報のデータベース化である。もちろん、従来から取引先に関する情報を整理し、アクセスしやすい形にすることは行われてきた。しかし、例えば医療関係の企業など、従来あまり縁のなかった企業に対して、どの情報が重要であり、それをどのように整理すればよいのか、改善すべき点が多い。秘書として用意した資料や、相手先とのあいさつ・連絡が適切であったどうか、役員各位の意見や感想を聞き、また同僚とも情報を交換しながら、使いやすく効果的なデータベースを作成する。
 デバイス商談と違いITソリューション事業は、顧客の業務や環境を深く知らないと提案できないので時間がかかるが、そのフォローができていない。また、コロナ禍では接待や慶弔対応がほとんどできなくなっており、直接的な業務以外のチャンネルで相手先の情報を得ることが難しくなっている。それだけに、個々の役員が得た情報を集積して、有効に活用できる体制づくりが重要である。
 この改革は、逆説的ではあるが、コロナ禍によって可能になった側面がある。従来は、面談や接待を実施した履歴はあっても、会話の内容などは役員自身や営業がそれぞれ記憶やノートなどに残すだけなので、組織としてのデータにできていなかった。今回は、顧客との応対や社内での打ち合わせ・報告がメールその他の形で記録されることになる。これらのデータを整理するのは大変だが、今まで属人化・ブラックボックス化しがちであった業務手法が、部門全体で共有できる意義は大きい。この問題は、まだ解決への糸口が見つかったという段階だが、長年の懸案の解決につなげていきたい。
 次に、第二に取り組むべきこととして、秘書業務の効率化がある。これについては、コロナ禍でのリモートワークの導入が、構造改革のヒントになる。これまで、役員と秘書は同じ空間で仕事するのが当たり前だったが、在宅時に別の場所で業務を行う機会が大幅に増えた。このことは、打ち合わせのための時間や場所の調整にかかるコスト削減の可能性を示している。 
 もっとも、現時点では従来と違う働き方による困惑や混乱のほうが大きい。そこで、私が中心になって、現在のコロナ禍で困っていること不便なことを秘書へアンケートを取ったり、それを元にディスカッションをしたりしている。これを通じて、コミュニケーションをどれだけ円滑に取れるか模索している。例えば、対面の代わりにメールを多用しているが、件数が膨大になり、しかも勤務時間外でも連絡可能なために、メリハリのない非効率な連絡が増えている、といた問題点が挙げられている。
 これに対しては、メールによる役員からの相談・連絡は常時受け付けるが、秘書からの返信は原則として一定の時刻・時間に限定することが議論されている。また、メールの書式をある程度統一して、誤解や再度の問い合わせを減らす方法を模索している。またZOOMによるリモート会議・打ち合わせの在り方についても、効率的な在り方が見えてきている。
 こうした目に見える業務改革以上に大きな変化は、社員同士のコミュニケーションが充実してきたことである。これまで各部門ごとに点在していたため交流のなかった役員秘書同士が、teamsにてポータルサイトを導入し繋がることで、情報提供や意見交換を実施できるようになった。すでに触れた共通データや面談や接待を実施した履歴はあっても、会話の内容などは役員自身や営業がそれぞれ記憶やノートなどに残すだけなので、組織としてのデータにできていないのは悩みであった。
 ベースの作成といった大規模な共同作業とは別に、日常的な業務情報の交換によって、各自が自分の業務を見直し、より効率的な方法を見つける場となっている。
 さらに将来的には、これを法人営業部で公式に位置づけ、業務改善への意見交換会・提案会にしていきたい。そして秘書業務のスキルアップの場としたい。構造改革の成果が表れ、業務量が増加しても、少子化の中で人員増はむずかしい。そこで、今まで個人的な工夫に任されていた秘書業務の効率化に、部署全体で取り組むようにしたい。同時に、若手もその場に参加させ、研修の場としていく。
 今後は、在宅で秘書業務の在り方が確立すれば、高い知識と能力を持っているのに、育児や介護でフルタイムでは働けない人たちにも、戦力になってもらえるだろう。全社的な構造改革を支えるために、私は法人営業部の改革に主体的に取り組んでいく。(2350字)

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