WIE小論文公開講座-第1回:ともかく書いてみよう-

この「公開講座」は、以前、初学者向けの入門用講座として開講していたものです。小論文入試に初めて取り組むみなさんのためにテキストのみをサイト上で公開することにしました。

※現在の「入門小論文」は、内容を改めて開講中です

受講を希望される方は、こちらの『基礎力養成講座-入門小論文』よりお申し込みください。

 では、早速小論文を書いてみましょう。といきなり言われても、「それができないからこの講座を受けているんじゃないか!」という声が聞こえてきますね。

 ここでは書き方の手順を示しながら、どのように書いていけばよいのかを示しますので、それにしたがって書き進めて下さい。

 その前に、原稿用紙に文章を書くときの基本的な決まりについて、整理しておきましょう。これが、オリエンテーションで挙げた作文能力(文章が正しく書けているか)のところの採点基準にもなります。せっかく苦労して小論文を仕上げても、ここができていないと、そもそも採点の対象にならない(即座に失格!)なんてこともありえます。まぁそこまで厳しくなくても、こんなところで減点されたのではもったいないじゃありませんか。このことはどの小論文用の参考書にも必ず載っていることですが、ここにまとめておきますので、これらの決まりは身につけてしまいましょう。

原稿用紙の使い方

1)文字とマス目の関係

①原則は1マスに1文字

 これは縦書きでも横書きでも変わりありません。また、句読点(、。)や中黒(・のことです。ナカグロと呼びます)などの区切りに使う点、かっこ(「」『』()など)、数学記号(+-%なども含む)、その他とにかく文字として原稿用紙に記入するものは、次にあげる例外以外、すべて1マスに1文字ずつ書いてください。

②1マスに2文字書く文字

 これは、原則として横書きの場合にしかありません。これは具体的には英語(あるいはほかのヨーロッパの言語)の文字を書く場合です。アラビア数字(123……)やアルファベット(AaBbCc……)です。kg・cmなどの単位もこの原則で1マスに2文字書いて下さい。例えばrunと書く場合には、ru/nのように区切っていきます。最後のnのマスは半文字分だけ空くことになりますが、次の文字を半分だけ入れるようなことはしないで、次のマスから書き続けて下さい。

 なお、縦書きの時には、アラビア数字は漢数字(一二三……)、単位はカタカナ(キログラム・センチメートル……)で書くべきです。英語の単語についてもr/u/nと区切るか、はっきり「ラン」とカタカナにしてしまいましょう。

③行が変わる時の例外

 以上のように横書きの欧文の場合を除けば、必ず1文字は1マスなのですが(縦書きの時には例外なく1字1マス)、位置によって「そこに書いてはいけない」というものがあります。それは「行が変ったとき、その一番上に書いてはいけない文字(というよりは記号)がある」ということで、具体的には句読点(、。)ととじるカッコ(」』など。「『などはかまいません)を行のはじめのマスに入れてはいけない、ということです。ではどこに書くかと言えば、前の行の終わりの文字マスに書いてしまいましょう。この場合、前の行の最後のマスには、2文字(」。などの時には3文字)入ることになります(図を見てください)。

 なお、この句読点やとじカッコを前の行の最後のマスに入れるのではなく、最後のマスの外にはみ出して書く方法もありますが、あまりお勧めしません。それでいけない、という理由はないのですが、最近の書物などは、ワープロが普及したせいか、句読点やとじカッコを行の外にはみ出させず、行の最後のマスの中に入れてしまう例が多くなってきているからです。

 最後に、・(ナカグロ=中黒)について、これは行のはじめに書いてよいのか、句読点などと同じ処理をするのか問題です。これを使うことは少ないのですが、英語では2つ以上の単語になるものを、くっつけてできた言葉を一語として使うとき、英語の単語の区切りのところに使ったりします(マス・コミュニケーション、ヘレン・ケラーなど)。私は、行のはじめにきてもよい、という立場です。もともとマス目の真中に書く記号なので、ほかの文字と同じマス目に書いてみると、みっともないからです。

 一番よい方法は、その前のところで、文章を調整して行の最後にこないようにすることですが、最後のマス目に2文字いれても、次の行のはじめにきても、特に減点はされないでしょう。

2)段落の区切り方と表題のつけかた

 さて、1マス1マスの使い方を習得したら、原稿用紙全体の読みやすさのための決まりごとを覚えていきましょう。

 みなさんが何か本や雑誌を読んだとき、段落が変らずに何十行もびっしり文字が詰まっている文章は、「読みにくいなぁ」と感じたことでしょう。これは単に、文字ばかりで見にくいといった視覚的な理由だけではありません。どこからどこまでがひとまとまりの話なのかわからない→全体の流れがつかめない→意味がとりにくい→内容がわかりにくい、となってしまうことが原因なのです。

  逆にいえば、上手に段落が切ってある文章は、話の流れやまとまりがうまくできていて、内容的にもすぐれた文章であるといえます。「(小)論文」が、自分の考えを読者に理解してもらい、納得してもらうことを目的としている以上、段落をどこで切るかは、高得点を取るために、とても大切なことなのです。

 では、段落はどこで切るとよいのでしょう?よく、5、60字~100字ぐらいで1つの段落にせよ、などと説明している参考書がありますが、むしろ、内容で切ることを考えてください。これは、うまく内容のバランスがとれていれば、適当な長さの段落になるからです。小論文の全体構成を後ほど説明しますが、その「起・承・転・結」で各1段落とすれば、800字以下程度の場合は、ちょうど良い長さになります。

 ここで覚えていただきたいのはただ一つ、段落を切るときには、段落の最初の行の最初の1マスをあけることです。

 なお、文章に表題をつけなさい、という指示がされている場合があります。表題を書く場所や書き方が指定されているなら、当然従って下さい。そうした指定がない場合には、

①解答用紙の最初の行に
②3字分空きをとり(4つ目のマスから書く)
③つぎの本論との間に1行何も書かない行を置く(本論を3行目から書く)

という原則で書いてください。

3)文字と言葉使い

①きれいでなくとも読みやすい文字で

 これもまたどの参考書にも必ず書いてあることですが、やはり気をつけてほしいことです。制限時間があるのでどうしてもあせりますから、早く書こうとして、崩した字になってしまいがちです。そうしますと、採点者も読みにくいので、せっかくの内容も十分に理解してもらえなくなる可能性が出てきます。また、特に漢字などは、崩した字で書くと、誤字と判定されるかもしれません。漢字の書き取り試験ほどではなくとも、ゆっくり目に書きましょう。だいたい標準的な原稿用紙(20字×20行で400字)1枚を20~30分ぐらいで書くのが目安です。この講座の練習問題を解いてみながら、自分のペースをつかんでください。これは実際の試験の時、課題を読んだり全体の構成を考えるのにどのくらいの時間をとれるのか、を決めるのにも必要ですから、ぜひ知っておいてください。

②くだけた言葉はひかえよう

 言葉は生き物ですから、時代とともに意味も変ってきますし、何がくだけた言葉や表現なのかという印象も変化します。ただ、採点者の大学や短大の先生方は、当然、高校生よりはかなり年齢が上です。したがって、たいていの場合、受験生の普通に使う言葉使いより1・2世代前の言葉の感覚でしょう。そういった人たちに、「タメ口」(この「タメ口」なんていうのも使わないほうがいい言葉です)をきいては、小論文の目的である「読者(この場合は採点者)を説得する」ということになりません。ただし、たとえば「現代の若者の文化」といった設問に答えるために、ダサい・ムカツクなどという言葉を例としてあげたい時はどうするのか。そうした場合には「」にいれたり、カタカナで書きましょう。そうすれば、あなたの言葉使いではなく、論文のための事例として扱っていることになるのです。

 では、具体的にどういう言葉なら良くてどういう言葉が悪いのでしょうか。リストを作ってもよいのですが、そんなものを覚えていては時間がかかって仕方がありません。これも添削指導をしていくなかで指摘しますので、そこで身に付けてください。3~5回ぐらい添削をうけると、おおよそこの言葉使いはヤバイ(ヤバイ、も使わないように)という感覚が身についてきます。

③漢字は正確に

 漢字の間違いも、減点の対象になります。とくに、最近はパソコンを使う人が多いので、正確な書き方を知らないでも、変換で正しい漢字ががすぐ出てきてしまうことに慣れてしまっているからでしょうか、漢字の間違いは年々増えているように感じられます。とくに、漢字熟語が間違っていると、文字使いの減点だけでなく、論文全体の意味がかわってしまい、より大きく減点されることにもなります。

 対策としては、これもリストを作って覚えるより、実際の添削の過程で、自分の良く使う文字で、間違って覚えているものを指摘してもらうほうが、弱点克服の近道です。また、別の言葉に置き換えてしまう方法(「重要」と言う漢字が出てこなければ、「大切」または「たいせつ」と書く)があります。

 むりにかんじにするひつようはありませんが、あまりひらがなばかりのぶんしょうはよみにくいうえに、ないようをごかいされるおそれがあります(どうです、読みにくいでしょ?)。このあたりのバランスは、やはり添削指導を受けていくうちに、身についてきます。

 概略こんなところですが、どうですか。「大変だな」と思った人も多いことでしょう。でも、あまり堅苦しく考えないで、ともかく鉛筆を持って実際にかいてみてください。これが添削方式の良いところで、本当にこれでよいのかどうか、すぐ判断がつくのですから。

制限字数と制限時間

 原稿用紙の具体的な書き方を頭に入れてもらったところで、制限字数と制限時間についてふれておきましょう。

 これもよく言われていることですし、実際の出題では注意書きがついていることも多いのですが、文字の入っているマス目の数ではなく、改行のために使った空きまでも字数に入ります。

 言い換えると、制限字数は行数で考えればよいのです。1行20字の解答用紙で、制限字数が600字以内とされているなら30行書いてよい、と考えてください。解答用紙が制限字数どおりでない時もありますので、あらかじめどこまで書いてよいのかチェックしておきましょう。

 残酷なようですが、制限字数をオーバーした場合、採点対象外=0点ということもあります。そのためにも、どこまで書いてよいのか、確認しておきましょう。逆に、少ないほうでは、8割か9割というのが目安です。一応本講座では、9割以上書くことをお勧めします。したがって、600字以内という指定なら、540字、先ほどのように行数でいえば、27行は書くつもりでいてください。確かに、制限字数の半分ぐらいしか書いていなくても合格している人がいますが、出題者がこのぐらいは書いてほしい、といっている字数に近いほうが、有利だからです。なお、一応書き終えてから見直してみて、修正したいと思ったとき、時間があれば消しゴムで消して書き直し、制限字数にあわせるべきです。そんな時間のない時には、元の文を二本線で消してその脇に修正文を書く方法があります。この場合の字数の変化は、1行以上(先ほどの例でいえば20字以上)でなければ認められるようです。それ以上の大きな変化なら他の場所で調整するのですが、これも二本線で消す方法でかまいません。

 次に、制限時間についてです。問題を見て(課題文がある場合にはそれを読んで)、すぐに、解答用紙に書き出す人がいますが、これはいけません。下書きをする必要はありませんが、一応の文章の構成を考えてから書き始めましょう。途中で考えがまとまらなくなったり、制限字数の許容範囲を守れずに、大幅に減点されることにもなりかねません。この時間がどのくらい取れるのか、先ほど述べたように、自分が小論文を書くペースはどのくらいなのか、から逆算してください。おおよそ、制限時間の2~3割といったところでしょう。そうした準備をした上で、制限時間を有効に使ってください。

 ただし、以上の原則を完全に守るのは困難です。字数が少なくとも、制限時間が足りなくても、ともかく小論文をまとめましょう。実際に、先ほどから紹介したように、制限字数の半分ぐらいしか書けていなかったり、時間が足りず、無理やり文章を締めくくったりしても、志望校に合格した先輩もいるのですから。

書くことをどうやって見つけるか

 ここまでで、小論文の書き方のうち、形式のほうはおおよそ理解していただけたものと思います。多少自信のない人も、実際に小論文を書く練習をしていくなかで、身についていきます。あとは、具体的に大学(あるいは短大)の入試問題をやっていきましょう。

 ただし、あらかじめお断りしておかなければならないのは、今回の講義では、課題文のない場合を中心に取り上げていきます。課題文(前にも述べたように図や表・マンガなどの時もあります)がある場合には、その内容を読み取る必要がありますが、その手順については、次回に解説します。

 いよいよ、「書くことが見つからない」「何を書いたらよいのかわからない」というの多くの受験生に共通の悩みを解決していきます。その対策をしてゆきましょう。

 次の例題をみてください。

  • 現在、関心を持っていることについて書け。

(2000年度 帝京大学短期大学部 情報ビジネス学科  60分・600字)

さて、何を書きましょう。「現在、関心を持っていること」について書け、ともとめられているのですからとりあえず、私が今関心を持っていることを並べてみましょう。

 ペット(猫)のこと、新しく出たゲーム、インターネット、将来の就職、友達とのけんか、トランプ大統領はどうなるのか、医師の間違いで自分が死んでしまうんじゃないか、このまま温暖化が進んだら大変なことになるのじゃないか、などなどいくらでも浮かんでくることでしょう。思いつくままに、書き出してみましょう。たいていの場合、解答用紙とは別に、下書き用紙がついているでしょうから、それを使ってしまいましょう。特に問題用紙に何も書いてはいけない、という指示がなければ、それでもかまいません。

 あまりここで時間をとってもいられないので、せいぜい5分くらいで切り上げましょう。5個か10個もあげればよいでしょう。

 次に、そのなかから、書くことを決めてゆきます。

 その際にちょっと注意してください。あなたは何のために小論文を書こうとしているのでしたっけ。もちろん志望の大学(短大)に合格するためですよね。この場合でしたら「情報ビジネス学科」に入学したいのですから、そのことを、採点者にアピールしなければなりません。いくら自分のペットが昨日から食欲がなくて心配でも、そのことを書いて、採点者に「この人に入学してもらおう」と思ってもらえるでしょうか。このことを考えに入れれば、今あげた中では「インターネット」か「将来の就職」が候補になるでしょう。このどちらか、一方にきめられれば、それを書けばよいのですが、どちらにしようか、ただ悩んでいても、時間ばかりが過ぎていきます。むしろ、次の作業をはじめてみましょう。そうすれば、どちらがいいか、うまくすると、両方ともに、ひとつの文章でかけるかもしれません。

小論文の構成を知っておこう

 ここで、わき道にそれるように思われるかもしれませんが、論文全体をどのように構成するか、を考えてみましょう。

 これもまた多くの参考書に書いてあることですが、一番基本になる構成は「起・承・転・結」型です。実は、これ以外にも構成方法はいろいろとあって、これが正解、という形式があるわけではありません。しかし、この「起・承・転・結」方式が基本ですし、実際に研究者や評論家などのプロが書く論文もこのスタイルが多数派です。この方式を取りあえずマスターしてください。それ以外の書き方も添削の折に必要に応じて解説しますが、少なくとも大学(短大も含む)入試のレベルで、この書き方では解答不能、というような出題はありません。

  は、この「起・承・転・結」は、どのように小論文を構成するのでしょうか。まとめてみましょう。

起……ずばり、書き出しです。あなたが、この小論文で書こうとしていることを、まず読者(この場合は採点者)に、はっきりさせるところです。今の例でいえば「私が今一番関心を持っているのは、インターネットの発達が今どのような影響を社会に与えるか、である」とか、「将来、どのような仕事につくか、それが現在私の一番の関心のある問題である」といった書き出しにあたるものです。この部分は短くても良く、全体の字数の1割ぐらいで十分です。

承……ここで、「起」であげた題材を具体的に説明します。将来の就職であれば、「こんな仕事についてみたい」、インターネットならば「現状はどうなっていると、自分は考えているのか」などを述べるところです。ここまでは、自分の個人的な興味や感想などでかまいません。全体の4分の1~3分の1ぐらいが分量の目安です。

転……ここが、小論文の一番中心になる部分です。分量的には全体の3分の1~2分の1ぐらい使いましょう。何度も述べたように小論文では「読者に納得してもらう」ことが大切ですから、そのための書き方をしましょう。

 ここまでの「起・承」の部分では、原則的には一般の作文と小論文の書き方に大きな違いはありません。ただ、この転の部分で、どこまで、多くの人に共通な論点をだし、読者の共感と同意を得られるかが小論文として成功するかどうかの分かれ道になります。これに対して、作文のレベルのものを書こうとしているなら、こうした点に配慮せず、個人的な体験や感想を述べていけば良いのです。

 実際に、小論文入試であっても、特に推薦入試などの場合などでは、作文的な文章が書けていれば、十分合格圏であることが多いのです。今回取り上げた例題では、「現在、関心をもっていること」について書けばよいので、恐らく作文的な解答でも良いでしょう。しかし、ほかの受験生に対して差をつけるためには(言い換えれば、より合格を確実にするためには)、小論文らしい文章にすることをお勧めします。この講座でも、「小論文」が書けるようにしていきます。

 さて、多くの人(あるいは場合)に共通な論点とは何なのか、具体的に見ていきましょう。引き続き、インターネットと将来の就職の例で考えます。

 インターネットならば、世界中で急速に普及していること、人々の生活になくてはならないものになっていること、従来の人と人を結びつける手段(「コミュニケーション」とか「情報伝達」などという言葉を使えれば、言う事なしです)として今までのものとどう違うのか、などについて述べてゆけば良いのです。

 同様に、将来の就職ならば、今日のような就職の難しい状況でどのようにしたら自分の希望する仕事に就けるか、自分のつきたいと思う仕事がこれから社会の中でどのような意味を持つか、などについて書いていきます。またこの世の中において、就職するとはどういうことか、またどのように仕事を選ぶべきなのか、といったこともよいでしょう。ここでも、「働き方改革」だとか、「アベノミクス」、あるいは「経済の国際化」「グローバル化」などの言葉がつかえれば、やはり言う事なしです。

 自分の考えていることが、いかに多くの人に共通する普遍性をもっているかを、うまく書くことができれば、高得点が期待できます。

結……名前は「結」ですが、結論というわけではありません。いわゆる結論は、むしろ「承」の部分です。ここは、制限字数一杯なら、書かなくても良い(その場合、3部構成になります)ところです。ただし、もう一度自分の考えを短くまとめて書いたり、「承」の部分に読者が同意してくれるならこんなことも考えられるといった「今後の展望」などを書きます。そうすることで、あなたの文章の内容がより強く読者に印象付けられ、また論文としての一貫性を認めてもらえるからです。

 先ほどからの例でいえば「こうしたわけで、いま私はインターネットが○○だから、関心を持ち続けている」とか、「以上が私が就職について、いま強く関心を持っている理由である。さらには、今後は、○○にも注目してゆきたい」といった具合になります。

 問題を読むなり原稿用紙に書き出すのではなく、一見遠回りのようでも、この起・承・転・結の構成を考えてから書きましょう。そのために5分や10分の時間を使っても、やみくもに書くよりは、結局早くて良いものができます。制限時間を有効に使うために、是非この手順を守るようにしてください。

※ご注意※

この公開講座は相当に昔の作成であって、小論文に対する今のWIEの考え方とは、かなり異なっています。

小論文に関して飛躍的に研究が進んだ現在、WIEは「起承転結」を、非難すべきものとも遵守すべきものとも考えていません。
なぜなら、要求された要素を正しく含んでいれば、それは合格答案になるからです。
すなわち、どのような構成を取るかは、小論文の評価とほとんど関係がありません。
書きやすい構成法、というものはありますが、それが唯一の正解ではありません。

ゆえに、起承転結で書こうとそうでなかろうと、ロジカルな論文を書くことは可能です。
重要なのは、問われたことに答えること、そしてそれを論理的に論証することです。

起・承・転・結のメモを作る。

 「起承転結」の形で書くことの重要性がわかってもらえたところで、具体的にどうしていけばよいのでしょうか。「起承転結」の構成にそってメモを作ってみましょう。本当にメモですから、文章ではなく、「書こうと思うこと」小論文の起承転結もっといえば、書こうと思う単語をならべてみましょう。引き続き先ほどからの例でやってみましょう。

 インターネット
起……インターネットの今後
承……楽しい、世界中、いろいろな分野
転……今までの情報伝達の手段になかった特徴、世界を結びつける、双方向性、
結……言葉の問題、英語

 将来の就職
起……将来の就職
承……自分の力を伸ばしたい、世界中で働きたい
転……就職状況、終身雇用の変化、技術(スキル)を身につける、
結……自分の目標の確認

 どうでしょう。どちらでも書けそうですね。ただ、勿論二つ小論文を書くわけにはいきません。このメモを作る段階で、書きやすそうな方で決めましょう。

字数を考えながら、実際に原稿用紙をうめる。

 ここまで準備したら、いよいよ解答用紙に書き出してみます。なお、たいていの場合解答用紙と別に下書き用紙がついてきますが、これに本当に1回書いてから、解答用紙に清書していくことは、実際の試験場では不可能といっていいでしょう。ここまでに紹介したメモを作るために、下書き用紙は使ってしまいましょう。

 この講座では、解答用紙に1行20字の原稿用紙を使うものとします。そうすると、制限字数は600字ですから、合計で30行ぐらい書く、ということになりますね。これを先の「起・承・転・結」のおおよその字数配分に基づいて、大体どのぐらい書けばよいか目安をつけておきましょう。必ずこのとおりでなければならない、と言うわけではないのですが、全体の分量が多すぎたり逆に少なすぎたりしないために、これを考えておきます。書いている途中で、字数オーバーになりそうなら話題を少し削ったり、あまりにも短くなりそうなら、もう一つ別の問題も書いてみよう、といったことを判断することができるからです。

 今回、600字(30行)ですから、次のような配分で考えてみましょう。九割書く、という目標ですので、最低540字(27行)を目標にします。

 起:40~60字(2~3行)、承:140~200字(7~10行)、転:200~300字(10~15行)、結:残り、ということでやってみましょう。

 解答例1) インターネットでの例

まず、起の部分です。

  •  私が今、一番関心を持っているのは、インターネットの普及が、今後どのような影響を社会にあたえていくかである。

3行、60字です。あと最低24行、できれば27行書く、ということになります。

  •  私自身も、ネットサーフィンを楽しんでいる。いろいろな分野の情報が、世界中からそれも瞬時に手に入れられるので、何時間やっていても飽きることはない。私の周囲にも同じように、インターネットに関心を持っている友人は多い。世界全体では、大変な人数の人が、インターネットに関心を持っていることになるだろう。

承の部分は8行になりました。あと16~21行です。

  •  インターネットが多くの人をひきつけるのはなぜだろうか。文字通り世界中と結び付けられていること、伝達の速度が速いことだけではないだろう。今までの情報伝達手段とのより根本的な違いは、一対一の関係だけでなく、ホームページのように一対多の関係やチャットのように多対多の関係が可能になったことである。手紙や電話などの情報伝達と比べてみれば、その違いは明らかである。このことは、政治や経済の世界にも大きな変化を与えるだろう。もはや、強権的な国家が情報を統制しようとしても、その国民がインターネットによって、その実態を世界に訴えることもできる。逆に、ごく少数の人間によって、根拠のないデマや中傷が世界中にまき散らされ、人を破滅させることも可能になる。

転で力が入ってしまいましたので、16行も書いてしまいました。これで9割の540字はクリアーです。しかし、あとの2行で結をつけてみましょう。

  •  このようなインターネットの二面性に、私は注目せざるを得ない。

 解答例2) 「就職」での例

次に、「就職」でも書いてみましょう。
こちらは前のようなコメントはしませんが、要領は同じです。

  •  現在、私が最も関心を持っているのは、将来自分がどのような職業につくかということである。
      自分の職業を決めるにあたって、他の人たちはどのようなことを基準として考えるのだろうか。収入が第一の人もあるだろうし、仕事以外にやりたいことがあり、時間の拘束が少ないことを条件にする人もいる。私の場合、興味がもて、やりがいの感じられることが、職業を選ぶ上で第一の条件である。
      今日では、社会の変化が激しく、例え収入や働く時間などの条件を満足させる企業に就職しても、その条件がいつまでも続く保証はない。さらには、その企業自身が倒産するなど、消滅してしまうことも、考えなければならない。今までと違って、どの企業に勤めているかとか、何の組織に所属しているかといったことは、重要でなくなるだろう。たよりになるのは、自分がどうしてもやりたいと思う仕事と、そのためのスキルだろう。逆に、自分の身に付けた知識や技術をいかし、やりたいと思うことをできる場所を見出すことが必要になる。
      私は、将来、海外に出て仕事をしたいと考えている。そのために、まず必要なのは、語学力、特に英語の力だと思う。学生時代に、この語学力をしっかりと身につけたいと考えている。

より良い小論文を書くために

 さて、皆さんの解答はどうですか。最後に、もう一度作文と小論文の違いについてふれておきましょう。解答例の1)、2)ともに、合格圏の解答です。では、どちらの方がより高得点だと思いますか。いずれも誤字脱字や間違った言葉遣いは、一応ありませんし、題意を取り違えたり、論旨が読み取れないような話ではありません。その意味では、合格点が100点満点で60点だとすれば、80から90点ぐらいはとれています。

 しかし、解答例1)がインターネットの影響を深く分析し、その危険性を指摘しているのに対して、2)の方は、一応、就職することの今日的意味について述べていますが、最終的には自分の関心や決意について書いています。その点からいえば、解答例1)のほうがより小論文的であり、解答例2)のほうがより作文的です。

 この設問では、作文的であってはいけない、ということにはなりませんので、心配しないで下さい。しかし、作文と小論文の違いを見分けられるようになれば、自分が書く場合に、有利になります。特に、次回で取り扱う課題文を読まなければいけないタイプのとき、その内容を読み取るのに大きな力になるでしょう。

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