2027年度入試の状況②

2027年入試を取り巻く状況について、近年の入試動向をもとに説明します。

目次
第1回:少子化でも入試が容易にならない、むしろ難しくなっている?
第2回:上位校の入試が難化する三つの理由 ―大都市集中・共通テスト・推薦シフト〈今ココ〉
第3回:採用現場で進む「学歴フィルター」の精緻化と 入試方式の影響
第4回:AIとジョブ型採用が大学選びに突きつけるもの

上位校の入試が難化する三つの理由 ―大都市集中・共通テスト・推薦シフト

 第1回の記事「少子化でも入学が容易にならない、むしろ難しくなっている?」で取り上げた三つの構造変化のうち、本稿では「受験生側の動向の変化」を、具体的なデータとともに見ていきます。

大都市圏への集中が続いている

 第一の動向は、地方の高校生が、進学先として大都市圏の大学を選ぶ傾向です。文部科学省「学校基本調査」を基にした旺文社教育情報センターの分析によれば、大学進学時に他県からの流入超過となっているのは、東京・京都・大阪を中心とする10都府県だけで、流出超過は37道県にのぼります(注1)。地元国立大学に進学していた層が、卒業後の就職を視野に入れて首都圏・近畿圏の大学を目指すようになっており、結果として、受験生総数が横ばい〜微増にとどまる一方で、大都市圏の大学の競争率は高止まりするという構造になっています。 この傾向はコロナ禍で一時的に弱まったものの、最近は明確に戻りつつあります。河合塾教育研究開発本部の近藤治・主席研究員は、2026年入試についてのダイヤモンド・オンラインのインタビューで、「コロナ禍の終息以降、首都圏の大学への回帰、特に私立大への回帰現象が非常に強く現れている」「全国から再び受験生が集まってきている」と述べています(注2)。文部科学省も東京23区内の大学定員抑制策を継続せざるをえないほど、東京圏への集中圧力は構造的なものになっています。

共通テストが思考力重視へとシフトしている

 第二の動向は、共通テストの性格そのものの変化です。共通テストはセンター試験と比較して、知識・技能だけでなく思考力・判断力・表現力を重視する方向へ問題作成方針が転換し、2025年度からは試験時間も国語が80分→90分、数学Ⅱ・B・Cが60分→70分に延長されました(注3)。「暗記だけでは対応できない試験」になりつつあるのです。 ここで注意したいのは、平均点の動きが年度によって大きく違う点です。2025年度は新課程初年度のため受験生への配慮があり、全体的に平均点はむしろ上昇しました。しかし、本格的な2年目となる2026年度では、河合塾の集計で6教科文系の平均点は前年比−2.4ポイント、理系は−3.0ポイントと文理ともダウンし、国語・物理・情報Ⅰなどで明確な難化が見られました(注4)。 平均点が下がった年に何が起こるか。河合塾・近藤治氏は同じインタビューで、「当初は私立大の受験は共通テスト利用方式だけを使って併願しようと思っていた国公立大志望の受験生が、『共通テスト利用方式だけではなく、一般方式も受けた方がいいんじゃないか』と焦り始めた」と分析しています(注2再掲)。共通テストが難化すると、本来は国公立志望者である上位層が私大の一般方式にも出願を広げ、私大上位校・準難関校の競争を激化させる、という連鎖が生じるのです。

推薦型・総合型選抜の拡大と一般選抜枠の圧縮

 第三の動向は、入試方式そのものの変化です。文部科学省「国公私立大学入学者選抜実施状況」に基づくスタディサプリ進路の解説によれば、2024年度に総合型選抜で大学に入学した人の割合は全体の約16.1%にのぼり、私立大学の93.4%、国立大学の79.3%で実施されています(注5)。学校推薦型選抜と合わせると、私立大学では入学者の半数以上が、年内に行われる推薦・総合型選抜で決まっている計算です。 裏返せば、一般選抜の合格枠は構造的に縮小しているということです。さらに、上位校では「推薦・総合型なら受かりやすい」という単純な見方も成立しなくなっています。たとえば上智大学の公募推薦は、2025年度時点で多くの学科の実質倍率が1.5〜3倍程度ですが、心理学科では4.8倍、理工学部の人気学科では5〜10倍に達するケースもあります(注6)。「年内に確実に決めたい」と上位校の推薦・総合型に挑戦して不合格になり、結果として一般選抜にも回り直す受験生は決して珍しくありません。

 このようにして、地方から大都市圏へ、国公立志望から私大上位校への併願拡大へ、そして推薦・総合型でも結局競争が激しい、という三つの流れが重なり、上位校の入試難易度は下方修正されていないどころか、特定学部・特定方式では明確に難化しています。次の記事では、こうした上位校志向を一段と強めている要因として、「企業の採用基準の精緻化」について見ていきます。


注1:旺文社教育情報センター「大学進学時、37県で流出超過…都市部に集中」(リセマム経由) https://resemom.jp/article/2016/09/23/33935.html
注2:ダイヤモンド・オンライン「医学部志望が激減!2026年の大学入学共通テストを大分析」(河合塾 近藤治 主席研究員インタビュー) https://diamond.jp/articles/-/384319
注3:河合塾マナビス「共通テストとセンター試験はどう違う?難易度や平均点推移から解説」 https://www.manavis.com/mana_magazine/center/
注4:河合塾 Kei-Net「共通テスト概況(2026年度大学入学共通テスト特集)」 https://www.keinet.ne.jp/center/analyze/common_test.html
注5:スタディサプリ進路「総合型選抜とは?推薦型・AOとの違い、選考方法、条件を徹底解説【2026年度最新】」 https://shingakunet.com/journal/exam/20170327210803/
注6:ホワイトアカデミー高等部「上智大学の公募推薦の募集内容・学部別倍率・合格のための対策方法」(2025年度入試結果に基づく集計) https://whiteacademy-ao.com/university-info/sophia-university/