2027年度入試の状況③

2027年入試を取り巻く状況について、近年の入試動向をもとに説明します。

目次
第1回:少子化でも入試が容易にならない、むしろ難しくなっている?
第2回:上位校の入試が難化する三つの理由 ―大都市集中・共通テスト・推薦シフト
第3回:採用現場で進む「学歴フィルター」の精緻化と 入試方式の影響〈今ココ〉
第4回:AIとジョブ型採用が大学選びに突きつけるもの

採用現場で進む「学歴フィルター」の精緻化と 入試方式の影響

 第1回の記事「少子化でも入学が容易にならない、むしろ難しくなっている?」で取り上げた三つの構造変化のうち、本稿では「企業の採用基準の精緻化」について詳しく見ていきます。

学歴フィルターは「新しい現象」ではない

 「学歴フィルター」と聞くと、近年になって突如登場した不公正な仕組みのように思われがちですが、実際には日本企業の採用において、何らかの形で出身大学による選別が行われてきた歴史は古く、1970年代前半には当時の「指定校制度」が国会で問題視された記録もあります(注1)。つまり、出身校による選別は、形を変えながら半世紀以上にわたり続いてきた構造的な現象です。近年特徴的なのは、その選別が消えるどころか、むしろ精緻化しているという点です。2015年には、ある企業の説明会予約画面が、登録した大学名によって「満席」と「空席」の表示が切り替わる事例がSNS上で大きく話題になりました。エントリーシートの受理順や面接案内の優先度といった可視化されにくいプロセスでも、出身大学による差は依然として残っています。また、近年は採用早期化の中で、書類スクリーニングにAIを導入する企業も増えており、結果として大学名による振り分けがより自動化・効率化されているとも言われています(注2)。

数字で見る「学歴フィルターの実態」

 学歴フィルターは「実感」レベルにとどまる話ではなく、複数の調査でも数値として確認されています。日本労働組合総連合会の「就職差別に関する調査2023」では、四年制大学・大学院卒業者の43.9%が「学歴フィルターを感じたことがある」と回答しました(注3)。HR総研の2016年度の調査でも、「採用戦略においてターゲット大学を設定し、特別な施策を講じている」と回答した企業は41%にのぼっています(注3再掲)。 採用領域の動向を分析するHR×AI Insightは、2026年1月の記事で次のように書いています。「『学歴フィルター』という言葉はネガティブに語られがちですが、採用の実態として、大学ランクによる活動プロセスの違いは無視できないレベルに達しています。旧帝大や早慶といった上位校学生の就活は、一般学生からは見えない『クローズドな世界』で完結しつつあります」(注4)。上位校の学生にはリクルーターが付き、説明会・選考が早期に進む一方、それ以外の大学の学生は、そもそもそのルートに入れない、という構造です。

入学時の入試方式まで問う企業も現れ始めている

 さらに最近は、出身大学だけでなく、その大学に「どの入試方式で入ったのか」を確認する企業も現れ始めています。先端教育オンラインは、推薦・総合型入学者の学力低下を懸念する声を背景に、「就職活動では出身大学と共に、一般入試と推薦入試のどちらで入学したかを問う企業も出てきている」と指摘しています(注5)。これは入学後の学業成績を企業が一定程度参考にしていることの裏返しで、各種の推薦入試で入学した学生の中に基礎学力が不足した層が含まれることへの企業側の警戒感が背景にあります。 「年内に確実に決めたい」という理由だけで安易に推薦・総合型を選んだ受験生が、就職活動の段階で一般入試合格者と区別され、不利な扱いを受けるリスクが、徐々に現実のものとなりつつあるのです。

受験生にとっての含意

 こうした状況は、受験生の志望校選びにも具体的な影響を及ぼします。企業の採用ターゲット校に入っているかどうかが、就職活動の入り口を決めてしまう以上、受験生は志望校選びの段階から「就職を見据えた一定ライン」を意識せざるをえません。WIEの受講生にも、就職を意識して、一年余分に時間をかけてでもターゲット校に入り直したいという理由で再挑戦される方が増えています。 そしてそのターゲット校の多くは、本サイトの他の記事で見てきたGMARCH・関関同立以上の大学群と重なります。少子化にもかかわらず上位校が難化していることと、企業の採用基準が精緻化していることは、決して別個の現象ではなく、相互に強く結びついた現象なのです。 次の記事では、この構造をさらに加速させているもうひとつの要因として、「AIの普及とジョブ型採用の拡大」について見ていきます。


注1:Wikipedia「学歴フィルター」(指定校制度が1970年代前半に国会で議論された経緯について) https://ja.wikipedia.org/wiki/学歴フィルター
注2:就活塾ホワイトアカデミー「学歴フィルターとは?就活における大学名による区別の実態と突破方法」 https://avalon-consulting.jp/20s-media/university-filter/
注3:DYM「学歴フィルターの実態|就活で学歴フィルターがある企業の見分け方」(日本労働組合総連合会「就職差別に関する調査2023」、HR総研データを引用) https://dym.asia/media/recruiting/university-filter/
注4:HR × AI Insight「【新卒採用】『売り手市場』という幻と、その裏側で進行する残酷な二極化」 https://note.com/hr_ai/n/nd935f0b297ee
注5:先端教育オンライン「総合型・学校推薦型入試と学力低下の課題にどうアプローチすべきか」 https://www.sentankyo.jp/articles/7ec7aa35-0c9c-44ec-bfd7-237a68f89ed2