Ⅴ 論旨構成の問題

昇進昇格試験論文やビジネス文章を作成する際の参考になるコラムです。

⑪論証の必要性

 再提出していただいた答案は、論証が不十分です。このため忙しい読み手の時間を奪ってまで、読んで「頂く」価値がありません。その価値を出すために、自説が重厚であることが望ましいですが、仮にそれが不可能でも、論証の十分さは、実用文の最低条件です。

 自説は、単なるYES/NOのみではあり得ません。それには必ず論証がついて回ります。その上、課題文なしで、たとえば「地球温暖化についてどう思うか」と問われたら、そもそもYES/NOが成立しないのです。

 自説として、どのようなことを考えるかは解答者の自由です。また、自説に唯一の正解などあり得ません。心得るべきは、どのような自説をたてようとも、読み手を説得するに足るだけの、論証ができるかどうかなのです。しかしこの論証が、誰でも言いそうな、あるいは新聞などにありふれているようなものでは、評価は高くなりません。また、課題と同じ理屈を用いては、そもそも自分で考えていないとして0点です。大事なことですので注意しておきますが、評価されるのは論証の手続きとその緻密さであり、独創的な(小)論文とは、自説のそれを言うのではなく、論証の過程に独自性があることを言うのです。

 突き詰めて言うなら、自説そのものはYES/NOでもかまわないのですが、その論証が重要です。YESである場合、課題文以外の論拠を探し、それを用いてYESであると言える、独自の論理を考えねばなりません。NOである場合、単に課題文の論理を「違う」と否定するのではなく、否定する論拠と論理を提示し、できれば「別の何かの方が妥当である」という、代案を提示することが必要なのです。

 これらの自説をたてるため、また論拠を引き出すため、知識はむろん重要です。しかしそれは、そんなに高度なものを要求されているのではなく、普段の業務の中で得られる知識で十分です。従って小論文ではごまかしがきかず、普段どれほどまじめに働いているか(いたか)が、現れてしまうのです。

 それが十分であったことを祈りますが、もしそれに不足を感じるなら、今持てるだけの知識から、頭を絞って自説立案とその論証を行って下さい。どれほど論理的に、いかに正確な知識を用いて、どこまで深く考えることに耐えられるか、これが小論文では問われるのです。

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