合格者の添削例(日大)

N・Kさん 日本大学芸術学部映画学科

・添削本文

合格者の添削例(日大)1 合格者の添削例(日大)2


・添削コメント

全体のコメント

これまで演習して頂いたように、創作は一般的な小論文と、原則的には同じです。ただし、違うところもあります。
まず、同じところの視点で、答案を検討しましょう。設問は、「次の事柄をテーマにして、物語を作りなさい。(600字) 天馬空を行く」とあります。つまり物語のテーマは「天馬空を行く」に固定されているのです。さて、それでは答案のテーマはどうでしょうか。
赤地色が「女の子」に関する描写、青地色が「私」に関する描写です。これに対して、「天馬」そのもの(天馬だけ)を描写している箇所は、下線部のみに過ぎません。波線部は「天馬」と「女の子」、「私」を共に描写した部分ですから、「天馬」の描写と言えないことはありませんが、それでもテーマとすべき「天馬」は、これくらいしか描かれていません。文章のテーマ、言い換えると「なにを中心に取り扱ったか」ということは、単に量のみで決まるわけではありませんが、それでもここまで量に差がありますと、この文章は「天馬」をテーマに据えたとは言い難いと言えます。
次に考えねばならないのは、「天馬空を行く」からの発想に不足があることです。下線部を見ると、なるほど天馬が空を駆けていますが、「天馬空を行く」から出発した発想として付け加わっているのは、母馬がいること、子馬は白馬であること、駆け回っている空が星の降る夜空や、赤く燃える夕空であることに止まっています。しかも、一文の中で置き並べて記述されているに止まっている=情景の説明になっているだけです。テーマとして与えられた「空を行く」についての発展が、この程度に止まっていては、やはり不足の感は否めないでしょう。
以上二つから、小論文の評価と同様の判断、すなわち「テーマを取り違えている」と言うことが出来ます。志望が志望だけに、ストーリーそのものよりもその「お膳立て」に、無意識に筆が進んでしまうのも無理はないのですが、それでも、設問の規定は絶対です。ですから、「私」や「女の子」ではなく、「天馬」をストーリーの中心に置き、それがどのように「空を行く」のかについて、記述せねばなりません。


なお、字数も不足しています。現状では509字ですが、せめて規定の9割である540字は必要でしょう。今回の答案を改良する方針で書き直しを行うなら、「私」や「女の子」をぐっと減らし、字数不足の分を含めて、「天馬」とそれが「空を行く」ドラマを作って下さい。

次に、創作独自の問題について検討しましょう。小論文では、論証の見事さに評価が置かれますが、創作ではそれがない代わりに、おもしろさが求められます。これまでのコメントの繰り返しになりますが、面白い=笑える、ではありません。悲劇でもかまわないのですが、読む者の興味を引きつけ、感動を与えるのが面白いということなのです。
面白い、の根本の1つは意外性です。これは2つにわけられ、1つは今までに見聞きしたことがないという意味での意外性、もう1つは、見聞きしてはいたが気がつかなかった意外性です。しかし前者を創作するのは容易ではありません。これまでに「無い」ものを一から描くのは、大変だからです。しかも、それを読み手に理解されるように書くとなると、さらに難しいことがわかるでしょう。ここで誤解のないように言っておきますが、「見聞きしたことがない」とは、想像を絶するということであって、実際に接したかどうかは関係がないということです。宇宙人に出会った人はいませんが、宇宙人を描いて創作しても、独創的なドラマにはなりません。
従っておすすめするのは、後者による意外性です。大事なものを無くしてしまったとき、いつも目にしているはずの机の上などで見つけることがあり、「あれ?」と思うことがありますが、日常の中の意外性とは、例えばこのようなことです。
さて、この視点で今回の答案を検討しますと、残念ながら意外性は感じられません。誰もが出会いそうな情景であり、誰もが考えそうな想像です。従って、面白くない=創作としての評価は、高くなりがたいのです。

まとめますと、「天馬空を行く」を中心に据えるべきであること、ストーリーに意外性を持たせること、この2つが改善の方針です。おそらく、ドラマを一から作り直すことになるでしょう。かなり困難とは思いますが、この1回だけでもいいですから、時間をかけて、悩みに悩んで考えて下さい。逃げ出してはいけません。また、何かに頼ろうとしてはいけません。自力で高得点を得られる創作が出来たという成功体験を、是非持って頂きたいのです。1度でもその体験があれば、本番で合格答案を書くのは、さほど難しいことではありません。

以上です。


上記コメントを参考にして答案を修正し、再提出して下さい。


西早稲田教育研究所
大学別小論文講座
担当 高田正継

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