合格者の添削例(九大:持込小論文)

匿名希望さん 九州大学法学部(持込小論文)

・添削本文

合格者の添削例(九大:持込小論文)1 合格者の添削例(九大:持込小論文)2


・添削コメント

全体のコメント

問1については、基本的に問題はありません。赤字部分を修正すればよいでしょう。
問2については、課題文をふまえておらず、全面的に誤りです。課題文は帝国海軍と海自を例に出して、「組織における上下関係のあり方」を論じたものです。しかし答案は、「組織における昇進のありよう」を論じているため、全く別の概念を取り扱ったとして、採点対象外=0点となる可能性が極めて高いと言わざるを得ません。また設問にある、「あなたの経験」について全く触れられていないため、規定違反としてこれまた採点対象外になるでしょう。従ってコメントは、個々の修辞に関するもののみに限定します。

さて以上の理由から、この答案はどこをどう直せば合格答案になるという性格のものではありません。課題文の論旨をふまえて、全面的に書き直す必要があるのです。また察しますに、小論文に取り組むための基本的な事柄が、やはり理解できていないように思われます。従って以下のコメントでは正解例を示すのではなく(正しい答案への方針は以上に述べたとおりです)、今後のためにも「小論文とはどのようなものか」について、もう一度言葉を換えて説明することにします。

小論文に必要な要素は、設問と課題文に対する正しい理解と、それに沿った、そして論理に矛盾のない正しい思考と、その結果を説得的に読み手に伝える、正しい言葉の3つです。これ以外に、合格答案の要素はありません。また、この3つのうち1つでも欠けた答案は、決して合格答案になることはありません。
正しい理解とは、まず設問に規定された字数、必須条件を守ることです。次いで、課題文が与えられているのであれば、その論旨を理解することに他なりません。論旨を理解するとは、今回失敗してしまったように、わかったところだけを取りあげることや、関係がありそうなことを勝手にこしらえることでは決してありません。課題文の重要概念を丁寧に拾い、それらがどう関連づけられているか、どのように筆者は評価しているかなど、全面にわたって理解する必要があります。

その際、「課題文が何を言っているのかわからない」のであれば、それは読み解く辛抱強さに欠如があるか、あるいは課題文が取りあげている概念を知らないかのどちらかです。前者であれば、我慢して理解する他はありませんが、後者であれば、普段の勉強が不足していることを意味します。言い換えると、ソクラテスについて論じた課題文ならば、ソクラテスが誰であるか、知っていなくては話にならないのです。
これは、小論文で知識が重要であることの、第一の理由です。つまりここでは、課題文を理解するために、知識が必要なのです。さてここで必要な知識の範囲ですが、これは大学入試である以上、高校で習う各教科の知識です。すなわち、高校の各教科を勉強しなくても、小論文なら何とかなるというのは、とんでもない間違いだと言わざるを得ません。
次に正しい思考とは、なによりも課題文と設問の要求に沿っていることを意味します。今回の答案で言うならば、課題文と設問の要求とは異なる思考をいくら重ねようとも、全く意味がないということです。これは国語的な問題が全くなかったとしても、そして論理上に矛盾が全くなかったとしても同じです。さてその上で必要なのは、論理的な正しさです。課題文と設問の要求に従い、自分なりの説を立て、どうしてそれが正しいのか、論証していくことになるわけですが、論拠も論証もなしに自説のみを述べたり、あるいは用いた論拠が間違っていたり、「AならばB」とは直ちに言えないのに、それを結びつける理屈を付けなかったりしたら、論理的な思考とは言えません。
なお一般的に論理的に正しいとは、次の3つの場合がそれであるとされます。すなわち、1.事実と照らし合わせて間違っていないもの、2.多くの人々の同意を得られるもの、3.同じ論説の中で矛盾がないものです。ここにもまた、小論文で知識が必要とされる理由が見られます。すなわち、事実と照らし合わせて間違いがないかどうかは、その事実を正確に知っていることが必要です。また多くの同意が得られているかどうかは、社会常識を知っていなければ確かめようがありません。それよりももっと重要なのは、高校の各教科で教えられる知識は、これこそ多くの人々の同意を得られたものであるということです。最後の矛盾の有無については、数学Ⅰで学ぶ論理計算について、正確ではなくとも一通り理解していなくてはならないでしょう。
最後に正しい言葉とは、ひとえに正しい読書によって得られるものであることを強調しないわけにはいきません。簡単な理屈ですが、読むことさえできないのに、書くことなどできはしないのです。いかなる作家・学者であろうとも、その書いた文章は、それまでに彼(女)が読んできた、膨大な書籍や文章の読解から得た言葉が、組み合わされたものに他なりません。従って正しい言葉で正しく書くためには、普段から一定の読書量が必要なのです。従ってポイント集や用語集のたぐいをいくら暗記しようとも、文章を書くための力にはほとんどなりません。これは、文法書を暗記しても、決して外国語文が書けるようにはならず、書けたにしてもネイティブからは噴飯ものの文章になりがちであることと同じです。
もう一つ、正しい言葉は、正しい思考に裏打ちされたものであることを忘れてはなりません。自分でもよくわかっていないことを無理に書こうとして、失敗している答案は非常に多いのです。また文と文、段落と段落が正しく結びつけられていないのは、書く前の思考がいい加減であったり、そもそも何を論じようとしているのかわかっておらず、何でも良いから文字を埋めようとした結果であることがほとんどです。逆に言えば、読んでよくわかる文章とは、事前の思考が充実していることを意味しており、この点からも、すでに記された優れた文章を読む=正しい読書を行うことの重要性があるのです。すなわち、概念と概念をどのように結びつけるか、いかにして読み手を説得するか、これを教えてくれるのは、優れた書物に他ならないのです。


個別のコメント

a:候補生(個人)=海上自衛隊(組織)ではありません。
b:法人が所属する各員に配分する報酬は、金銭のみに限られません。些末なものでは椅子が上等になることから始まり、定期券をグリーン車のものにするとか、出迎えの車を差し向けるとか、給与以外にもさまざまな報酬があります。また、人によっては給与よりも、肩書きを喜ぶ場合があります。
c:どのように曖昧なのかを記し、その根拠を示しませんと、単なる「感想」「憶測」として減点の対象です。
d:文脈がとぎれています。適切なつなぎの言葉(文法用語に言う「接続詞」だけではありません)を用いてくっつけることが必要です。観念(=「これを書こう」という思いつき)は他の観念と関連づけませんと、概念(=他の思いつきと結びつけられた、文中で取り上げたものごと)にはなりませんが、文もこれと同じで、おのおのの文が適切に結びつけられていなければ、文章にはなりません。従って、前の文あるいは段落と、後の文あるいは段落がどのような関係になっているかを、つなぎの言葉を用いて読み手にわかりやすく説明しなくてはならないのです。


それではご健闘をお祈りしております。

西早稲田教育研究所
担当 高田正継

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