WIE小論文navi:講座添削主任から

 推薦・AO入試には、「受験生が、大学に対して自分を売り込む、一種の営業活動」という独特の性格があります。皆さんはこれまでの人生で、「お客様」として振る舞う機会が多かったと思いますが、推薦・AO入試では逆に、「自分を売り込む」ことが必要です。この慣れない作業をしなくてはならないからこそ、多くのみなさんが、「どうすればいいかわからない」と悩みを抱えることになるわけです。
 しかし心配はいりません。この講座では、文章を書き、添削を受けるという訓練を通じて、皆さんの「人物」を魅力的にアピールするための方法、および思考能力の養成を目指します。具体的には、大学側に正しくアピールできる志望動機書の作成と、1編の文章にとことんつき合い、それに対する自説を述べるという、2本立ての訓練です。また付録として、面接対策をどう行えばいいかも解説しました。
 今この時点では、志望動機書や小論文、そして面接に対して、「どんなものなのか、さっぱりわからない」と感じている皆さんも、講座を一通り終えた後では、その姿をつかんでいることでしょう。

 近年、自己推薦・AO入試の応募条件は、かなり緩和されています。ただ、こうした受験機会の増大は、受験生にとって単純に朗報とは言えません。なぜなら、一般入試と大差ない程度の不合格者が出るからです。応募の間口を広げた分、後でしっかり選別をする形になってきたと言えるでしょう。結局、推薦入試・AO入試を利用する場合にも、過去問を研究するなどの受験準備が重要になったといえます。この点、通常の小論文入試と同じ対策が必要です。

 さらに、推薦・AO入試では、別の要素も重要になります。ほとんどの大学では、志望動機書と面接が課されており、合否を判定する際、重視されています。
 WIEでは、今までに多くの方の志望動機書を添削してきました。そこで気が付いたのは、志望動機・自己推薦に関して、基本的な誤解をしている方が実に多い、ということです。特に難解大学では、大学側の用意した質問事項に答える形で志望動機書を書く形式が多いのですが、多くの答案が、この質問事項を誤解したままです。これでは書類選考の段階で不合格になってしまいます。

 どうして、このような誤解が多いのでしょう。この疑問を解くために、WIEでは、推薦・AO対策を謳っている参考書などを大規模に調査しました。その結果従来の参考書や受験対策講座の多くが、一般的・抽象的な、いわば「心構え」を述べているだけで、大学側の質問事項を分析し、何を書くべきかの指導をしていない、少なくとも極めて不十分だとわかりました。従ってWIEでは、大学側が問うていることは何か、これを徹底して分析し、それに即した答案作成を指導することにしました。

 また、志望動機書を慎重に作成することは、面接の対策としても重要です。多くの場合、面接では志望動機書の内容に即した質問がされます。仮に、志望動機書とは直接関係のない質問であっても、志望動機書と矛盾する答えをしたのでは、やはり大きな減点の対象になります。ですから自分の体験や考えを志望動機書としてまとめておくことは、何よりの面接対策にもなるのです。

 このような志望動機書の重要性に注目して、今回WIEではこの講座を立ち上げることにしました。また、志望動機書・面接と並んで、小論文試験が課される場合も多いので、こうした大学・学部に対しては、最新の過去問演習も併せて行うようにしました。

 冒頭で述べたように、推薦・AO入試といえども、近年では「落とす」試験になりつつあります。しかし、同じ大学・学部の一般入試よりは、合格は容易だといえます。この講座を利用して、皆さんも是非志望大学の合格を勝ち取ってください。


西田 京一(にしだ・きょういち)
東京大学文学部西洋史学科卒業後、出版社に勤務。編集部で学術書・教科書・学術雑誌の編集に従事。2001年出版社退社後、共同経営者としてWIEを設立し、大学受験小論文の主任添削者を務める。